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NRI独自開発の最適化AIによってビジネスを変革!数理最適化チームの取り組みや「Fiboat」の魅力についてインタビュー!

atlax編集部



野村総合研究所(以下「NRI」)には、数理最適化を用いたお客様支援を行うチーム「Fiboat」があります。2022年12月には、数理最適化の専門家である 国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」)の 梅谷 俊治 教授と、アドバイザリー契約を結びました。
お客様の課題が複雑化し、解決に高い専門性が求められるなか、どのように数理最適化の活動を進めているのか、チームメンバーの渡辺 和泉、砂長谷 健、土井 健、大貫 峻平、石山 将成に「Fiboat」についての熱い思いを取材しました!

 

Q1:チームの取り組みについて教えてください


渡辺
:数理最適化によってお客様のビジネスを高度化・効率化するためのソリューション「Fiboat」の提供を行っています。 Fiboatでは、数理最適化の専門的なノウハウや高度な最適化AIを組み合わせることで、お客様の業務に合わせた最適化エンジンを提供します。ビジネス上の課題を数理モデルに落とし込むにあたっては、お客様特有の業務要件を柔軟に考慮しながら「コスト最小化」「利益最大化」が見込めるオペレーションを導きます。また、CO2削減や労働生産性向上など、社会課題解決に訴求することもできます。

土井:渡辺さんの話にあった、お客様の「コスト最小化」「利益最大化」が、私たちの取り組みで一番大切にしているところです。われわれの活動はコストが大きく変わる領域に関わっているので、時として、お客様の経営層も巻き込んでビジネスを進めていきます。システムを作って納品するだけでなく、しっかり検証を行いながらNRIのコンサルタントと一緒に提案活動したり、お客様の業務要件を聞いたりして、上流の領域から実際にシステムを作り保守していくというところまで幅広い領域で活動するチームです。

 

Q2:そもそも、数理最適化とはどのようなものなのでしょうか?また、数理最適化でできることを教えてください


渡辺
:数理最適化とは、現実の問題における目的と制約を数式で表現し、その数式に合ったアルゴリズムで最も良い解を求める手法です。機械学習などによる将来の予測が技術的に容易となった昨今、予測された情報に基づいた意思決定を支援するアプローチとして幅広い分野で注目を集めています。 具体的な応用先としては、物流における配送ルート、従業員シフトといった人員配置、工場での生産スケジュールなど、業務の計画を立案する際に用いることができます。
例えば、物流における配送ルート計画を立案するという場合には、お届けする荷物の量、時間枠の指定、トラックの台数、倉庫の荷積みスペースなど様々な「制約」があります。お届け先によってはスペースの関係で、入れるトラックのサイズが限定されているケースもあります。 このような「制約」を前提に、コストを削減することを「目的」として、コストの最小化を目指す計算を行います。配送におけるコストには走行時間や車両台数も関係しており、このコストを抑えるためには制約を守った効率の良い配送ルートを考える必要があります。 しかし、配送ルートはお届け先が増えれば増えるほどパターン数が爆発的に増加するため、単純な計算方法では現実的な時間内に良いコースを立案することは困難です。 このような場面において、数理最適化というアプローチを使うことにより、なるべく少ない計算時間で良いコースを立案することができます。

砂長谷:私たちは、数理最適化は現在盛り上がっているAIの次に来るものだと考えています。AIの活用では、「予測」がよく聞かれるワードかと思います。AIは、データを集めて、事象を可視化し、次に予測します。例えば、残業時間の平均時間を出し、どこの部署が多いか少ないかを可視化、ある案件が発生した時には、過去のデータからこの案件は〇〇部署に負荷が大きくかかるなど、予測を行います。
数理最適化は、可視化、予測の結果を踏まえて、利益を最大化できるような人員配置やオペレーションなどを導いていきます。「可視化」→「予測」→「最適化」の流れによって、「数理最適化」はビジネスの制約を守りながら目的となる指標を最大化することができると考えています。

渡辺:そうですね。「稼働」が偏ってしまう状況になってしまう部署を予測できているのであれば、人員配置を見直すといった対策を打つことで、業務時間が適正化され、余計なコストがかからない形で業務を進めることができるようになります。コストが下がることで、利益も変わってきます。コストや利益に直接響いてくるところが最適化の特徴だと思います。

土井:数理最適化は現在、「mathematical optimization」と呼ばれていますが、20年ほど前は、「mathematical programming」と呼ばれていました。このプログラミングという単語はコンサートやイベント等で良く見る「プログラム」を作る、つまり「計画」を立てるという意味で用いられていたそうです。私たちが行っているmathematical optimizationは、mathematical programmingであり、最適な「計画」を立てるということを主としています。それは、先ほどの話で言うと達成したい目的に向けて人員の計画を立てることです。また、在庫をバランスよく持っておきたい場合は、在庫の計画を立てます。数理モデルを使いながら正しくそれらの計画を作っていきましょう、というのが数理計画、数理最適化です。

 

Q3:FiboatやFiboatチームの強みを教えてください


渡辺:数理最適化を応用したパッケージやサービスはたくさんありますが、Fiboatの最大の強みは、通常のパッケージ製品では成し遂げられないレベルまでお客様の業務に合わせたアルゴリズムを組み立てることができる点です。数理最適化をビジネスに応用するにあたって最も重要なことはいかに業務要件を反映したアルゴリズムを組むことができるかだと思います。パッケージ製品だと固定化されているので業務要件を100%に近い形で反映することが難しい場合もあるかと思います。ですが、Fiboatではお客様の業務をNRIならではの高い解像度で理解をした上で、Fiboatの保有する既存資産を組み合わせることで、お客様の納得ができる解を追求しているため、100%近くまで導くことができます。
また、専門書や論文などをベースとして数理最適化に関連する知見を日々高め合えるようなチームであることや、この領域の専門家である大阪大学の梅谷教授とアドバイザリー契約を結んでいることが強みになると思います。梅谷教授には数理最適化の理論的な面を体系立てて整理いただいており、メンバーの専門性を高水準に保つことができています。
実際の案件においても、このように高い専門性を持ってお客様の業務に寄り添ったソリューション提供を行ったことで、約10億円規模のコスト削減効果を試算したという事例が実際にあるという点もチームの強みの一つと考えています。
その他には、量子コンピューティング技術や宇宙関連技術についても調査検証を行っており、これらについてもそれぞれ高い専門性を持つメンバーが在籍しています。先端技術も含め、イメージに振り回されることなく正確に技術の現在地を認識することが重要だと考えており、将来を見据えた道筋を立てながらFiboat事業を発展させていきたいと思っています。

土井:そうですね。さきほどにお話ししたように、コンサルタントと一緒にお客様の声を聞き、提案、そしてシステムを作り保守していく、全ての工程を担えるということはチームとしての強みだと思います。私はアルゴリズムが専門ですが、砂長谷さんは大企業の基幹システムに関わり、開発の標準化をしっかりと行ってきたメンバーです。最適化に特化した高速開発をしていくフレームワークを作っていけるのは砂長谷さんがいるおかげだと感じています。また、大貫さんはアルゴリズムを深堀し、原因調査や新しいアルゴリズムの提案を行ってくれています。石山さんは、営業を頑張ってくれています!
幅広く多様な強みがあることで、Fiboatという製品が出来上がってきた背景があります。数理最適化を行っている会社はたくさんありますが、Fiboatはさまざまなフェーズにコミットできるメンバーが揃っています。あと、雑談好きな上司がいたりもするので、みんな雑談が大好きなのも強みですね(笑)

一同:(笑)!!本当、明るいメンバーです!(笑)

 

 

Q4:お客様支援を行っていくなかで大変だったことやよりよいサービスを提供していくために努力していることがあればお聞かせください。

 

砂長谷:お客様とプロジェクトを進めていくなかで当初話していた制約が変わることがあります。後から必要になった制約を追加していくことは大変だなと感じます。ですがそこを諦めずに、私たちができる中で、要望に応えていけるよう努力しています。

また、内外で魅力的なサービスを作ることも努力していることの一つです。今後、メンバーが増えていったり変わっていったりしても、このサービスが作っている人たちからしてもとても魅力だなと感じていてもらえるように、開発の仕方を含め魅力的な部分をどんどん作っていきたいです。



渡辺:そうですね。先ほどのお話でもあったように、お客様と会話を進める中で当初の想定と異なる業務要件を加味する必要が出てくると、アルゴリズム実装の方針を再検討するため、大変なケースが多いです。そのような時はチーム全員でアイデアを出し合いつつ、アイデアに基づいた検証を行うことで最善策を取るように心がけています。 また、ある時点で持っている情報からアルゴリズムを実装し、お客様にその結果を早期に評価いただくことも重要だと思っています。Fiboatには既存資産として最適化アルゴリズムを高速に実装できる仕組みを持っているのですが、そういった仕組みも活用しながらまず作ってみてお客様からフィードバックをもらい、改良するというサイクルを高速に回すことを意識しています。 加えて、先述した通り、日々の研鑽によって知見を高め合うことでチームとしてのノウハウのレベルを高めています。

大貫:大変だったことは、お客様からの事前の制約から変わっていき、数字にできない要望がどんどん出てきたときにちょうどいいところを見つけて対応していく必要があったことです。お客様と納得し合える解決にむけてコミュニケーションを重ねながら、どんな技術や手法を使えばよいか考えていくことが難しいところでした。
例えば、配送の最適化では、ドライバーの体力も勘案し、体力の消費具合はどのくらいなのかを考えることがあります。その際、1便目と2便目の消費体力をできるだけ均等にしたいという要望があり、これに対し、ちょうどいいバランスを目指して、体力の平準化を行っています。この「ちょうどいい」が難しいところなのですが、諦めず検証を重ね、お客様の要望に応えられるよう努力しています。

 

石山:私はこのチームに入って日が浅いのですが、後から参画したからこそ意識していることは、ソースコードをより綺麗で読みやすくすることです。特に、コードの書き方や変数の命名規則などを統一することで、コードの可読性や保守性を高め、新メンバーのキャッチアップにかかる時間の削減を意識しています。開発している最適化エンジンの具体的なロジックをしっかり理解するためには、ソースコードを一度全て読む必要があります。開発者が増えていく中で、コードの書き方や変数の命名の仕方が異なると、実際は同じロジックだとしても、コードを読んで理解するスピードは落ちてしまいます。コードに統一性を持たせることで、チームの規模が拡大していってもスムーズな開発や運営ができるかなと思い、このようなことを普段から意識しています。

土井:Fiboatの立ち上がりの頃は、使ったことのないアルゴリズムや初めての領域にアプローチしていく必要があったため、たくさんある手段の中から何を選ぶという選択の繰り返しで、こちらが期待した解が出てこないことがよくありました。その解が出ない原因が何かを探ることがとても大変でした。また、複数の事象が組み合わさっているため、何が原因で不具合が起きているかが見つけにくかったりしました。そこをお客様やコンサルタントと調整しながらうまく対応していきました。
また、最近Chat GPTなどの新しいAIツールが出てきていますが、最適化の領域でもたくさんのパッケージ製品が世に出てきていて、こういった新しい製品が使われることも多くなってきているかと思います。ですが、こういったツールを使う中で、「結局よく分からない」、「思った通りの結果にならない」という感想も多く、しまいには、「どう修正すればよいか分からない」、「やっぱりこのツールはいけてないな」という話をよく耳にします。その時に、解決につながる力は基礎力だと思っています。確固たる基礎力に基づく改善により、こういった「良くわからない」や「思った通りの結果にならない」といった事象に対する改善を行うことができると考えています。
私たちはこの数理最適化の領域において、アルゴリズムの勉強や最適化の構造を知っておくこと、モデルや数式を組むなどの基礎を日々勉強しています。忙しい中でも本を読んだり、問題を探して説いてみたり、継続的に基礎力を上げるための努力を行っています。そういった積み重ねにより数理最適化を用いた高い問題解決能力が培われていくと信じています。

 

Q5:数理最適化を活用することで解決したい課題やNRIとして実現したい夢はありますか?

 

渡辺:世の中のビジネスにはまだまだたくさん効率化できる部分が残されているのではないかと考えています。そのような余地に対して数理最適化は大きな効果を発揮するケースもたくさんあります。さまざまなビジネスにFiboatを適用することで、より人々が暮らしやすい社会を築き上げることができればと思っています。

石山:土井さんのお話にもあったように、最近は、ChatGPTなどの生成系AIが出てきており、AIがより一層注目されています。AIは人が行うタスクの自動化や現象の予測が可能ですが、一方で最適化は複雑な物事の意思決定の自動化が可能です。AIや最適化によって、今まで人がやらざるを得なかった行動・思考の領域をどんどん自動化していくことができるようになり、より多くの人がより多くの時間を創造的な思考に費やせるようになると考えているため、このような自動化は素晴らしいことだと思っています。新たな価値の創造のために、お客様がより多くの時間を費やせるよう、NRIとしてお手伝いしていきたいと考えています。

 

大貫:お客様が「数理最適化を活用したい」「数理最適化をしたい」と考えたときに、NRIやFiboatそしてメンバー個人の名前が出てくるようになることが目標です。
そのために多くの案件をこなし、最適化のプラットフォーマーのような立ち位置を目指していきたいと思っています。また、このインタビューも含め、イベントやコンテストへの参加などを通じて情報発信を増やし、経験と名前ともに「最適化」という文脈で思い浮かぶような存在になれるよう貢献していきたいです。

砂長谷:日頃から、私たちがしている仕事の課題や作業を次の世代に残してはいけないと思っていて、もっと別の楽しいことをして欲しいと思っています!現代の私たちに求められている仕事を無くして、新しい価値を生みだすことに時間を多く割けるような未来を作っていくことが目標です。

土井:2つあります。1つめは、砂長谷さんと同じく、次の世代には本当にやりたいことやクリエイティブに時間を割いてもらいたいです。データを予測した先の最終的な意思決定を行うことができるというのが数理最適化という分野なので、あくまで理屈上のことではありますが、IoTなどでのデータ収集、アウトプットなどができれば、数理最適化を行うことで、すべてのことが自動化できるということになると思います。なので、なるべく人が働かなくてよい世界を目指せると思っています。
2つめは、微力ながらもいわゆる失われた30年と言われている時代を挽回する力となりたいという点です。プログラミング言語という言葉が世に出てくる前から、mathematical programming はあったという話を耳にしたことがあります。その時代に生きていたわけではないので、事実かどうかはわかりませんが、私たちが行っていることの理屈自体はそれほど昔からあり、歴史上、古くから行われてきたものだと考えています。
日本では、いろいろな文脈で失われた30年が存在したと言われています。多くの原因があると思いますが、私たちに近い文脈でそれを生んでしまった原因を考えてみると、実際の業務モデルを数理的なモデルに落とし込むということをやるべきだった時代、やれたはずの時代にやってこなかったことがシステム化で大きなハードルを生み、こういった何もできない失われた時代を生んでしまったのかなと感じることが多々あります。もしmathematical programmingの時代からコツコツと業務が数理モデルで表現され、小さいながらもシステム化されていたら今ほど大きなハードルも存在しなかったのかなと思います。
やはり積み重ねは大事で、今からこの大きな歴史の空白を急に挽回するということも難しいので、私たちは一歩一歩、1.5倍速ぐらいでその積み重ねをしっかり取り戻していきたいと思っています。日本は複雑な仕組みが多いので、数理最適化で難しい課題を解決できるようになれば世界を目指していけるチームになると思っています。そのために数理最適化という技術と複雑な顧客業務としっかり向き合って活動していきたいです!

 



 

Q6:atlaxブログの読者やNRIのお客様にメッセージがあれば、最後にお願いします。

 

土井:日本ではコンビニ店舗数が世界一位や自動車だと世界一位の会社があるなどとてもポテンシャルがある国で、素晴らしい会社が多いと思っています。複雑な仕組みが多いからこそ、数理最適化で解決できる世界初の事例を作り出せると思っています!お客様と一緒に世界初の事例を作って、是非お客様とともに世界に打ち出していきたいと思っています。

渡辺:私達は数理最適化およびその周辺技術を専門としていますが、一方でお客様のビジネスを最も良く知っているのはお客様ご自身だと思います。お客様のビジネスの中で「この業務をもう少し効率良く出来そうだ」「より利益を大きくするためにオペレーションを改善したい」「計画を立てるにあたり多くのパターンを人手で考慮するのが大変」など、お気付きのことがありましたらNRIのFiboatチームにお問い合わせください。お客様のビジネスを高度化させるために全力で取り組ませていただきます。

 

 

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