はじめに
NRIで、Oracle Cloud Infrastructure(以下OCI)を活用したサービスの運営を担当している高橋です。先日、2024年より新たに開始された生成AIに関するOCI資格「Oracle Cloud Infrastructure 2024 Generative AI Professional」認定試験を受験しました。
本試験はその名の通りOCIで生成AIを扱う専門性を証明する試験ですが、OCIサービスの仕様のみならず、一般的な生成AIの理論や、大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)、Retrieval-Augmented Generation (RAG) のアーキテクチャの理解が重視されていることが特徴です。試験勉強を通じて生成AI分野の基礎を順序立てて学ぶことが出来るため、これから生成AIを学ぼうという方にとっても、おすすめ出来る試験だと思います。
この記事では本資格の受験に興味がある方やこれから受験される方へ向けて、試験範囲と傾向の解説と、実際に受験してみて気づいた効果的な学習方法についてご紹介します。
Oracle Cloud Infrastructure 2024 Generative AI Professional (1Z0-1127-24)認定資格の概要
試験概要
Oracle Cloud Infrastructure 2024 Generative AI Professional認定資格は、機械学習およびDeep Learningの基本的な概念を理解し、PythonおよびOCIに精通しているソフトウェア開発者、機械学習/AIエンジニア、生成AIプロフェッショナル向けに設計されています。
この認定の取得者は、LLMアーキテクチャを深く理解し、RAGやLangChainなどをOCI Generative AI Servicesで活用して、LLMアプリケーションを設計、構築、運用、評価するスキルがあります。
項目 | 内容 |
試験時間 | 90分 |
出題数 | 40問 |
回答形式 | 選択問題 |
合格ライン | 65%(26問の正解で合格) |
詳細についてはOracle社の資格試験情報ページを参照ください。
試験範囲
目標 |
出題割合 |
出題項目 |
大規模言語モデル(LLM)の基礎の理解 |
20% |
|
OCI生成AIサービスの利用 |
45% |
|
OCI生成AIサービスによるLLMアプリケーションの構築 |
35% |
|
出題項目のうち、太字にしたものはOCIサービスに限らない生成AI全般に共通する出題項目です。
数字で見ると割合として半分近くを占めており、合格のためには生成AIの一般的な理論やアーキテクチャを理解することが重要です。また、LLMアプリケーションの実装項目では特に生成AI分野のアプリケーション開発で使われている、PythonやLangChainの基本的な使い方に関する出題も多く範囲に含まれています。
学習教材の紹介と学習ポイント
学習教材
■オンライン学習コース Become a OCI Generative AI Professional
Oracle Cloud Infrastructure 2024 Generative AI Professional認定資格の学習教材として一番のおすすめは、Oracle社より提供されているオンライン学習コースの履修です。
学習コース:Become a OCI Generative AI Professional
コースはOracle IDがあれば誰でも無料で受講することができ、ビデオ講義・試験対策講座・練習問題/模擬試験が含まれています。試験範囲に沿ったカリキュラムで学習することが出来る上、章末問題は試験の練習問題としても有用ですので、基本的にこのコースは全て聴講すると良いと思います。
※2024年7月時点では講義ビデオは英語のみですが、日本語字幕を設定することが可能です。
■Oracle Cloud Infrastructureドキュメント 生成AI
筆者が受験した際には、補助的な学習教材としてヘルプ・センターに公開されているOCIドキュメントを使用しました。試験範囲の45%を占める「OCI生成AIサービスの利用」の内容は、筆者が受験した際のテストでは全てこのドキュメントに記載されている内容で回答することができました。隅々までを覚える必要は無いかと思いますが、OCI生成AIサービスで選択可能な項目と値、例えば生成AIサービスで実行可能なタスクや、専用AIクラスタの種類と課金単位などは確認しておきましょう。
Oracle Cloud Infrastructureドキュメント:生成AI
抑えておきたい学習ポイント
筆者が実際に受験してみて、重要と感じた分野と学習ポイントを以下に挙げます。
■LLMにおけるTransformerモデル
まず、エンコーダとデコーダのLLMにおける役割の理解については、しっかりと理解しておきましょう。また各Transformerモデルの特徴、特にどういったタスクを想定するのかといった部分は押さえておくと良いと思います。
また、Temperature、top-k、top-pなど各パラメータの意味とパラメータを変更した場合にサンプリングアルゴリズムやProbabilityに与える影響についても別の形で複数問が出題されました。Greedy Decodingとはなにか?Stop Sequenceの役割は?など、知っていれば得点できる問題も多いためしっかりと得点源にしたい分野です。
■モデルのトレーニング手法
筆者が受験した際には、LLMにおける、事前学習(Pre-Training)とSoft Prompting、RAG、Fine-tuningの違いと特徴については形を変えて複数問の出題がありました。それぞれにかかる学習コスト・変更対象のパラメータ、必要なデータ種類などは抑えておきましょう。Fine-tuningに関しては、T-FewとVanillaの違い(主に、PEFTの特徴と利点の観点)は理解しておくと良いと思いました。
また、それぞれの手法は概念の理解だけでなく、「このユースケースではどの手法が適しているか?」という形で回答できるようにしておきましょう。
■プロンプティング手法
プロンプティング手法とそれらの特徴に関しては、トレーニング手法との組み合わせで複数回、出題を確認しています。細かいものまで覚える必要はなさそうですが、以下に挙げる代表的なプロンプティング手法に関してはサンプルのプロンプトと合わせて特徴を学習しておきましょう。
- Few-shot Prompting
- Least-to-Most Prompting
- Chain-of-Thought Prompting
- Step-back Prompting
■LangChainを使ったアプリケーション開発
LLMアプリケーション開発に関しては、実践的な形式の問題が多く出題されました。特にLangChainを使ったアプリケーション開発については、retriever、memory、chain、streamlit clientの処理全体における役割と関係性は確認しておくと良いと思います。
おわりに
本記事では、2024年より開始されたOCIの生成AI資格Oracle Cloud Infrastructure 2024 Generative AI Professional認定試験の概要と、受験してみて気付いた学習ポイントを紹介しました。変化の早い分野であるがゆえに、基礎的な理論や特徴に重みが置かれている点が印象的で、試験対策を通じて学習した知識は、利用するLLMやサービスが変化したとしても活用可能だと感じる内容でした。
本ブログをきっかけにOCI試験に興味を持っていただき、また、記事の内容が資格試験を受験される皆さまの一助となれば幸いです。
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