はじめに
NRIで、OCIサービスの運営を担当している高橋です。先日Oracle Cloud Infrastructure(以下OCI)のOracle Cloud Infrastructure 2023 Architect Professional 認定試験を受験しました。
本試験は、OCIのサービスを使用してインフラストラクチャを設計する専門知識があることを証明する試験で、OCI Architect Associate資格の次のレベルとして、より専門的な知識とスキルが求められる試験です。試験形式は、これまでは選択式の問題に回答する形でしたが、最新の2023年度試験では実技問題が加わりました。
この記事では本資格の受験に興味がある方やこれから受験される方へ向けて、2022年度までの試験との違いや、実際に受験してみて気づいた学習のポイントについてご紹介します。
Oracle Cloud Infrastructure 2023 Certified Architect Professional (1Z0-997-23)認定資格の概要
試験の概要と2022年度との比較
以下の表は試験の概要を2022年度と比較したものです。
項目 | 2022年度 | 2023年度 |
試験時間 | 120分 | 90分 |
出題数 | 50問 | 非公開 |
合格ライン | 選択問題:65% | 実技問題:65% 選択問題:65% |
具体的な試験内容の比較は下記のとおりです。 ※赤字:2022年度のみ ※青字:2023年度のみ
2022年度 | 2023年度 |
Oracle Cloud Infrastructure (OCI) でのソリューションの計画および設計 | Oracle Cloud Infrastructure (OCI) でのソリューションの計画および設計 |
・ビジネス要件および技術要件を満たすソリューションをプランおよび設計 ・高可用性および障害時リカバリを実現する設計スケーラブルでエラスティックなソリューション ・N層アプリケーション、マイクロサービス、サーバーレス・アーキテクチャなどのアーキテクチャ・パターンの作成 |
・ビジネス要件および技術要件を満たすソリューションをプランおよび設計 ・高可用性および障害時リカバリを実現する設計スケーラブルでエラスティックなソリューション ・N層アプリケーション、マイクロサービス、サーバーレス・アーキテクチャなどのアーキテクチャ・パターンの作成 |
OCIでのソリューションの実装および操作 | OCIでのソリューションの実装および操作 |
・ビジネス要件および技術要件を満たすソリューションの実装 ・OCI CLI、APIおよびSDKを使用したインフラストラクチャの管理 ・OCI でのソリューションの操作とトラブルシューティング |
・ビジネス要件および技術要件を満たすソリューションの実装 ・Infrastructure as Code を使用したインフラストラクチャの自動化 ・OCI でのソリューションの操作とトラブルシューティング |
OCI でのデータベースの設計、実装、操作 | OCI でのデータベースの設計、実装、操作 |
・データベースの評価および実装 ・データベースの操作とトラブルシューティング |
・データベースとベース・データベースを含むデータベースの評価と実装 ・データベースの操作とトラブルシューティング |
ハイブリッド・クラウド・アーキテクチャの設計 | ハイブリッド・クラウド・アーキテクチャの設計 |
・高可用性、帯域幅および待機時間の要件を満たすためのハイブリッド・ネットワーク・アーキテクチャの設計および実装 ・マルチクラウド・アーキテクチャの設計と実装 |
・Oracle Cloud VMware Solutionによるハイブリッド・クラウド・アーキテクチャの設計と実装 ・マルチクラウド・アーキテクチャの設計と実装 |
OCI へのワークロードの移行 | OCI へのワークロードの移行 |
・オンプレミス・ワークロードをOCIに移行するための設計戦略 ・データベース移行の実装とトラブルシューティング |
・Oracle Cloud Migrations による OCI へのワークロード移行の設計と実装 ・OCI へのデータベースおよびデータ移行の実装とトラブルシューティング |
セキュリティおよびコンプライアンスの設計 | |
・セキュリティおよびガバナンスのためのソリューションの設計、実装および操作 ・コンプライアンス要件を満たすソリューションの設計、実装および操作 |
冒頭でも触れましたが、2022年度の試験形式からの一番の変更点は、実技試験が加わった点です。こちらについては次の項目でご紹介したいと思いますが、OCIの技術者としてより実践的なスキルが求められるようになった変更ですね。
その他には、Oracle Cloud Migrationsなど新しくリリースされたサービスに関する問題も試験内容に組み込まれています。
実技問題の概要
恐らくこの記事をご覧になっている多くの人が気なっているポイントであろう、実技問題について記載します。
実技問題は、その名の通りOCIコンソールやCloud Shellを実際に操作することで指定されたタスクを完了していく形式の問題です。出題される問題には、画面上での操作で完結するものに加え、CLI(Command Line Interface)でコマンドを打ち込むものもあります。
コンソール画面自体は通常のOCIコンソールと同様ですが本番の試験時には問題の出題用ウインドウが一緒に画面に表示されます。
問題の出題用ウインドウには実技試験の問題文や、テナンシーにログインするために必要なユーザ情報などが記載されています。また、一部の設問ではOCIリソースを作成した後に、作ったリソース名やOCIDを記入するものもありました。こうした値は入力を誤ると折角タスクを完了しても採点されませんのでコピーペーストして、確実に入力していきましょう。
実技問題の学習コンテンツ
OCI試験の学習コンテンツとして「ラーニング・パス」と呼ばれるOracleが提供しているオンラインコースがあり、各認定資格試験で問われる範囲の内容が無料のビデオ講義で学習できます。このラーニング・パスで、実技問題についてもサンプルシナリオが公開されています。
公開されているシナリオは下記のとおりです。
# | シナリオの概要 | 対象のOCIリソース |
1 | DNSゾーンを登録し2つのVCN間で名前解決を行う。 | Private DNS |
2 | IPv4でオーバーラップしている2つのVCN間の通信をIPv6に変更して通信する。 | IP Address |
3 | Fn Project CLIを使用してPython Functionを構築・デプロイする。 | Functions |
4 | API Gateway経由でPrivate Subnet内のFunctionを呼び出すための設定をする。 | API Gateway |
5 | OCI CLIを使用してバケットを作成し、ファイルをアップロードする。 | Object Storage |
個々のシナリオの内容についてはここでは触れませんが、実際の現場で発生し得る課題に対し、環境を操作して解決していくというものです。一つのシナリオの中で、例えばVCNを作成し、そのVCNにセキュリティリストを設定する、など目的を達成するために複数の連続したタスクが発生します。
これらのシナリオはビデオ講義でわかりやすく解説されていますので、本番の試験に臨む前に全てのシナリオでスムーズにタスクをこなせる状態にしておくと良いと思います。
学習のポイント
・サービスの強みと弱み、適用例を理解する
選択式の問題に関してはArchitect Associate試験と比較すると、顧客の環境に合わせて各サービスの活用方法を回答するといった応用的な問題が多く出題されました。そのため、各サービスが「どういった場合に有効か?」という観点に加え「どういった場合には適さないのか?」という点も理解しておく必要があると感じます。
・実技問題のサンプルシナリオで未経験のサービスは実機を触っておく
使ったことのないサービスに関しては、OCIコンソールを操作してボタンの配置や入力箇所などを事前に確認しておくと本番で慌てずに回答することが出来ます。全てのサービスの画面を見ておくことは難しいかもしれませんが、少なくとも講義で登場したシナリオについては実際のOCI環境で操作をなぞって確認しておくと良いと思います。
・旧試験からの変更点は重点的に押さえておく
先に触れたようにArchitect Professional試験の問題ではOCIのアーキテクトとして総合的な判断が求められるため、出題範囲に対する幅広い知識が求められますが、中でも2022年度の試験から変更があった部分は押さえておくと良いと思います。
また、Oracle Cloud VMware SolutionやOracle Cloud Migrationsなどサービス名が明記されている変更点についてはサービス仕様を重点的に学習しておくと良いと思います。上記の2サービスに関する問題は私が受験した際にも複数出題されました。
さいごに
本記事では、2023年度から実技試験が加わったことでより実践的な形式となったOracle Cloud Infrastructure 2023 Architect Professional認定試験の概要と、受験してみて気付いた学習ポイントを紹介いたしました。
OCIでは2024年1月31日までの期間限定で無償資格取得プログラムも開催されていますので、ご覧頂いた皆さまがOCI試験に興味を持っていただき、記事の内容が資格試験を受験される皆様の一助となれば幸いです。
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