NRIの先進テクノロジーに関する取り組み～データを活用して業務の最適化につなげる～

IT基盤技術戦略室

小売・製造、金融・公共をはじめ、幅広い業界において「先進技術を活用してビジネスモデルを変革（DX）し、お客様へ価値提供していきたい」というテクノロジー活用への期待が高まっています。一方、その期待に反して、技術変化のスピードが速く、技術キャッチアップやその活用が難しいといった悩みもお聞きします。

そのような声にお応えするため、株式会社野村総合研究所（NRI）では「潜在的な顧客ニーズ発の技術調査」「技術動向を見据えた先進技術の早期評価」「獲得した技術の事業適用」に継続的に取り組んでいます。このような活動を通して、NRIは専門知識を用いて企業様のビジネスとテクノロジーの架け橋となり、DX 実現まで伴走します。

このブログでは、NRIで推進している先進的な技術獲得の取り組みについて、以下の通り複数回に分けてご紹介していきます。

NRIの先進テクノロジーに関する取り組み - データを活用して業務の最適化につなげる

- 本シリーズブログで紹介するテクノロジー領域。

今回は、「大量のデータを分析・活用するための手法や機械学習（Machine Learning、以下 ML）」に関連する研究開発の成果をピックアップしています。

1. データ利活用の生産性向上手法の開発

データ分析は、DX に向けた取り組みを支える重要な構成要素の一つです。最近では、大量のデータを収集するフェーズが一段落し、そのデータをどう活用していくのかへのフェーズに関心が移ってきています。

従来は、データサイエンティストが自身のローカル PC でデータ分析業務を行っており、分析対象のデータやデータ分析モデルを共有する手段がなかったため、主担当のデータサイエンティスト以外のユーザーがデータ活用に取り組むことが難しい状態にありました。

NRIでは、個々のデータサイエンティストの分析結果やデータ分析のモデルを共有可能な形にするため、個人環境で構築したデータ分析モデルを、クラウドなど、大規模なサーバーサイド環境に移行するメソドロジーを開発しました。

この技術を活用することにより、データと分析モデルがサーバーサイドを通じて自社のユーザーに広く共有できるようになります。その結果、データサイエンティスト以外も含めた社内のユーザーが広くデータ活用に関われるようになり、共同作業による新たな洞察を得られる機会が増え、業務の最適化へとつなげることが可能となります。

データ利活用の生産性向上手法の開発

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2. 気流シミュレーションと機械学習を活用した空調設定の最適化

地球温暖化を背景に、カーボンニュートラルに対する意識が高まっています。これは、二酸化炭素をはじめ温室効果ガスの排出量を削減するとともに、森林などによる吸収量を差し引き、実質的に温室効果ガスをゼロにして「脱炭素社会の実現」を早急に目指していくことを示唆します。

データセンターは多くの人々の生活を支えるシステムが稼働する社会基盤であり、安全・安心なデータセンター運営という大きな責任を担っていますが、情報処理にともなうエネルギー使用量の低減も重要な課題です。NRIでは、自社の全データセンターにおいて、2030年度までに使用電力に占める再エネ電力の割合を 70％とするという環境目標を設定しています。

具体的な取り組みとして、AI・ML 技術を活用した「コンピュータ室用空調機の設定最適化」を進めています。実際の環境では安全を冒せないため、強化学習の手法をとり、気流シミュレーションの結果データを教師データにして、コンピュータ室を模擬する機械学習モデルを作りました。そのモデルが再現した模擬コンピュータ室を使って、消費電力が少なく、かつシステムの安定稼働が可能な環境を維持できる空調機設定を導き出します。

今回作成した機械学習モデルを検証した結果、空調機の風量を平均 15％、電力を 30 ～ 40％削減することが確認できました。引き続き、本アプローチを用いた実地での検証や、ほかのエリアへの適用拡大に取り組んでいます。

気流シミュレーションと機械学習を活用した空調設定の最適化