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生成AIが実用段階に!?Microsoft Build現地参加レポート!

小泉 裕

こんにちは。NRIでAzureの導入支援を行っている小泉です。
2024年5月21日~5月23日に開催された、Microsoftの開発者向けカンファレンス「Microsoft Build」に現地参加したので、キーノートの振り返りや現地での体験についてご紹介します。

 

What’s Microsoft Build?

Microsoft Buildは、Microsoftが毎年アメリカのシアトルで開催している、開発者向けのフラッグシップイベントです。
最新の技術情報やAI、クラウド、データ分析などのセッションが提供され、世界中のエンジニアや参加者と交流する場となっています。新サービスの発表を行うキーノートや、300を超えるセッションに加え、ハンズオン形式のLabや様々なソリューションの展示(Hub)があります。
今年のMicrosoft Buildはオンラインとリアルのハイブリッド型で開催され、オンラインでの参加登録は20万人以上、現地参加者は約4,000人、うち日本からの現地参加者は約150人と海外からの参加者の中で上位となりました。

 

キーノート振り返り

ここからは参加したキーノートから注目すべきポイントをお伝えします。

Copilot+ PC

まずは開催前日の5/20に発表されたCopilot+ PC。
Copilot+ PCは生成AI機能が最適化された、NPU搭載のデバイスです。これにより生成AI機能をローカル実行するアプリケーション実装が可能となり、加えて以下のような機能が組み込みで提供されることも発表されました。

  • Recall:デバイスで以前見たコンテンツを検索できる機能
  • Cocreator:手書きと文字によるプロンプトを組み合わせて、新しいイメージを生成できる機能
  • Live Caption:PCで拾った音声から字幕を自動生成する機能

合わせて、機械学習用ライブラリであるWindows DirectMLで、PyTorchとWeb Neural Networkがサポートされることが発表されました。これにより、数千ものOSS AIモデルがWindows上のネイティブアプリやブラウザで動作するようになるため、開発者にとっては嬉しいアナウンスとなりました。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

Copilot Stack

以降はCopilot Stackに基づいて、レイヤごとに話が展開されました。
Copilot Stackは去年から登場した概念ですが、Copilotの進化に合わせてCopilot Stackの記載にも少しずつ修正が入っている点もポイントです。
今回はCopilot+ PCの発表に合わせて「Edge」という単語が新しく加わったり、サードパーティ製品との連携強化に合わせて「extensibility」と表現されたりしていました。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

AI Infrastructure

ここ半年間でAI利用に向けたスーパーコンピュータを30倍規模に拡大した話があり、AI分野に惜しみなく投資していることが感じ取られました。
NVIDIAやAMDとのパートナーシップ連携も強調され、関連して以下が発表されました。

  • 次世代GPUプロセッサ「Blackwell」を搭載したNVIDIA製GPU「B100」「GB200」を今年度中に展開予定
  • GPT-4に最適化されたAMD製GPU「ND MI300X v5」が一般提供

去年のMicrosoft Igniteで発表された、Microsoft製GPU「Azure Maia」やMicrosoft製CPU「Azure Cobalt」の開発も進んでおり、今後Azureデータセンターへの導入が進められるようです。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

Foundation Models

OpenAI社が最新のモデルであるGPT-4oを発表したのが、2024年5月13日。そのわずか1週間後のこの場で、Azure OpenAI ServiceでGPT-4oが一般提供されることが発表されました。GPT-4oはマルチモーダルモデルとして非常に注目を集めていますので、OpenAI社と強固なパートナーシップを結びここまで迅速にクラウドに展開できるのはMicrosoftの強みだと改めて実感しました。
さらにOpenAIにとどまらず、Azure AIは「Model-as-a-Service」として、エンタープライズ/オープンソースを問わずあらゆるAIモデルを提供するプラットフォームとなっていくことが強調されました。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

LLM(大規模言語モデル)の次はSLM(小規模言語モデル)の話に移ります。Microsoft製のSLMである「Phi-3」のラインナップが強化され、新たに「Phi-3-vision」「Phi-3-small」「Phi-3-medium」が発表されました。SLMはLLMに比べパラメータが少なくて済むため、特定分野に特化したユースケースや、Copilot+ PCなどローカルで動かすユースケースなど、SLMが第一候補に挙がる場面は増えてくると思います。ユースケースに応じたLLMとSLMの使い分けが重要になってきそうです。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

また、複数のAzure AIサービスの包括的なプラットフォームである、Azure AI Studioの一般提供も発表されました。OpenAIを含め様々なAIモデルのデプロイや管理、評価などが1つの画面で可能となります。プロンプト攻撃を防ぐPrompt shieldsや、モデルの応答がソースに基づいたものか(ハルシネーションが起きていないか)を検出するGroundedness detectionなど、セキュリティ機能も充実しているようです。

Your Data

AIモデルのトレーニング、ファインチューニングを効果的に進めるためには、データを最適な状態にしておくことが重要となります。
データを統合・分析するためのデータプラットフォーム「Microsoft Fabric」は、昨年一般提供されてから、今や世界11,000社以上で利用されているそうです。
そのMicrosoft Fabricから新機能「Real-Time Intelligence」がパブリックプレビューとして公開されました。様々なデータソースから送られてくるデータをリアルタイムに処理・分析・視覚化が可能な機能です。さらにCopilotを活用することで、送られてくるデータに対してリアルタイムに自然言語での質問等を行うこともできます。
また、独自データを用いるRetrieval-Augmented Generation(RAG)を構築するためのサービスとしてはAzure AI Searchが最適であることについても触れ、Microsoft FabricやAzure AI Studioとの統合も進んでいるようです。

AI Orchestration and Toolchain

AI開発のツールとしては、GitHub Copilotは欠かせないでしょう。今回はGitHub Copilotから以下2つが発表されました。

  • GitHub Copilot Workspace

Issueを作成すると、それをもとにCopilotがコード全体を解釈し、修正に向けてドキュメント更新やコード生成をステップバイステップで提案し、計画から実装まで実施してくれます。計画や実装に対してユーザーが微修正を行うこともできるため、反復的に行うことで精度も高まります。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

  • GitHub Copilot Extensions

この機能により、サードパーティのサービスがGitHub Copilot上で利用可能となります。
具体例として、GitHub Copilot for Azureが紹介されました。GitHub Copilot for Azureでは、GitHub Copilot上で自然言語の会話形式でAzureのリソースをデプロイしたり、Azureのリソース情報を取得したりすることができます。デモではAzure上で発生している問題について尋ねているような場面もあったため、今後トラブルシュートなどでも役立つかもしれません。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

Microsoft Copilot

最後に最上位レイヤとしてMicrosoft Copilotのお話です。
GitHub Copilotに続き、Microsoft Copilotでも外部との連携が強化されるとのことで、「Microsoft Copilot connectors」が発表されました。これによりAdobe, Atlassian, ServiceNow, Snowflakeなどの外部データソースをCopilotに統合することが可能になり、自組織のナレッジやデータを素早くCopilotに組み込めるようになります。
また、個人アシスタントの域を超えて、Copilotエージェントが1チームメンバーのように機能する「Team Copilot」も近々使えるようになることがアナウンスされました。Team CopilotはMicrosoft TeamsやMicrosoft Plannerなどで使うことができ、会議の進行を行ってくれたり、また一部の権限を委譲することでプロアクティブにタスクの調整や実行を行ってくれたりもするようです。 “A valuable new member of the team”と謳っている通り、生成AIを1人とカウントし業務効率化を図っていく時代もすぐそこまで来ているという印象を受けました。

(出典:Full Keynote: Satya Nadella at Microsoft Build 2024 (youtube.com)

Sam Altman氏の登壇

最後にサプライズでOpenAI社のCEOであるSam Altman氏が登場しました!
何か新しい発表があったわけではありませんが、印象的な言葉がありましたのでご紹介します。

“My biggest piece of advice is this is a special time and take advantage of it.

This is not the time to delay what you are planning to do or wait for the next thing.”

「生成AIが進化を遂げている今この瞬間は特別なときで、計画していることを遅らせたり次まで待ったりせずに、今すぐこのチャンスを活かすべし。」といった内容です。もう少し世の中に広まって活用事例が出てくるまで待とう、といった気持ちでいると、気づいたときには既に生成AIの波に乗り遅れているかもしれません。今このチャンスを最大限活かせるよう行動に移していこうと思いました!

 

セッション

キーノートが終わると、以下3種類のセッションが開催されました。

  • Breakout

中規模会場で開催される45分程度のセッションです。事例や最新サービスの紹介、サービスの使い方といった内容が多いです。オンデマンド配信されているものもあるため、気になる方はぜひ以下のリンクからチェックしてみてください。
Your home for Microsoft Build

  • Demo

Hub会場に2つDemo用の区画があり、そこで開催される15分程度のセッションです。その名の通りサービスのデモが中心です。Demoは配信されないため、気になるセッションがあればBreakoutよりも優先して行くようにしました。今回発表された新サービス、新機能のデモも多く、非常に参考になりました。
キーノートでは触れられませんでしたが、このタイミングで一般提供となったAzure API Managementのロードバランサー機能やAzure OpenAIトークン制限ポリシーなどのデモを行っていたセッションが、とても実用的で印象に残っています。
GA Load Balancer in Azure API Management | Azure updates | Microsoft Azure
GA Azure OpenAI Token Limit Policy in Azure API Management | Azure updates | Microsoft Azure

  • Lab

事前予約制で、実際に端末でサービスを触って体験できる1時間程度のセッションです。端末は用意されているものがあるため、手ぶらで行けそうな雰囲気でした!

 

Hub・Swag

Microsoft Buildのスポンサー企業がソリューションを展示しているHubでは、30社近い企業がブースを出して、デモを見せたり来場者とディスカッションをしたりしていました。Microsoft社のブースも多く、そこでは発表されたばかりのCopilot+ PCも触ることができ非常に盛り上がっていました。



また、入場時にスタンプラリーのようなものが配布され、訪れたブースでチェックをもらい、それを所定の場所に持っていくことでチェックをもらった企業のSwag(いわゆるノベルティ)をもらえるという仕組みになっていました。
私は今回以下のものをもらいました!

  • Armのマウスパッド(テレワークで愛用しています(笑))
  • Dockerのプランター
  • NVIDIAの定規
  • Microsoftの水筒

 

 

日本人参加者との交流

日本人参加者向けの交流会(非公式)やMicrosoft BuildのCelebrationなど、他の日本人参加者とのネットワーキングの機会も少なからずありました。現地参加ならではの醍醐味です。
日本からはユーザー企業の方が多く来られており、社内でどういったニーズがあり、今回発表された最新技術が今後どう活かせそうか、ということを議論するなど、非常に有意義な時間となりました。

 

おわりに

今回のMicrosoft Buildでは、目新しい発表は少なかったものの、外部連携など生成AIを実際に業務で利用していくことを見据えたアップデートが多く、また去年のMicrosoft Igniteで発表された新規サービスを使える状態に持ってきているということを示す内容が多かった印象でした。
「GPT-4o」や「Phi-3」などAIモデルも短期間で劇的な進化を遂げており、生成AI活用のフェーズがすぐそこまで来ているように思います。リアルタイムで情報をキャッチアップし、変化に伴ってその時々でビジネス変革のために生成AIをどう活用していくかということを常日頃から考えていきたいと思います。

Microsoft Buildでどのような情報が発信されたのか、本ブログが関心を持っていただく機会になれば幸いです。

 

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