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Azure AI Foundry Agent Serviceでマルチエージェントをサクッと作る

伊藤 豪太 - Nomura Research Institute, Ltd.

はじめに

こんにちは、NRIでAWS・Azureの技術支援を行っている伊藤です。

先月開催されたMicrosoft Build 2025でMicrosoftのCEOであるSatya氏からAIエージェントに関するサービスや機能が多く発表されました。その中でも私が注目したのは、Azure AI Foundry Agent Serviceの一般公開です。

Microsoftでは2024年からAzure AI FoundryというAIアプリケーション開発のための統合プラットフォームを展開しています。その中に新しくAzure AI Foundry Agent Serviceが追加され、AIエージェントがより簡単に開発・デプロイすることが可能になっています。

本記事では、Azure AI Foundry Agent ServiceのAIエージェント構築の実践として、マルチエージェントを簡単に作成する方法をご紹介します。

マルチエージェントについては以下の記事でも紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください

 atlaxblogs.nri.co.jp

 

Azure AI Foundry Agent Serviceとは

Azure AI Foundry Agent Serviceは、エンタープライズ環境にAIエージェントを構築するためのプラットフォームで、AIエージェントを簡単にデプロイできるだけでなく、運用準備も整った基盤を提供してくれます。

出典:Azure AI Foundry Agent Service とは - Azure AI Foundry | Microsoft Learn

Azure AI Foundryのサービスとして、構築済みの言語モデルがすぐに利用できることはもちろん、Application Insightsと連携することでロギングやトレーシングといった回答精度向上に繋がる、監視機能も充実しています。

 

Azure AI Foundry Agent ServiceでAIエージェントを作成する

では、実際にAzure AI Foundry Agent Serviceでシングルエージェントを作成してみましょう。今回は「ユーザーからの質問内容がどのパブリッククラウドの話か判断する」エージェントを作ってみます。シングルエージェントの作成は3ステップで完了します。

  1. 「新しいエージェント」をクリックする
  2. 「新しいデプロイの作成」をクリックして、使用する言語モデルを選択する
  3. セットアップ項目の「手順」にエージェントの役割をプロンプトとして記述する



それでは、エージェントプレイグラウンドに移動して、実際に作成したエージェントにクエリを渡してみましょう。


AWS Lambda (Lambda)に関する質問には「AWS」と、OCIのデータレプリケーションサービスであるOCI GoldenGateの質問には「OCI」と、それぞれ正しく理解し回答ができています。


さらに、サービス名が実際に登場しないような質問に対しても、どのパブリッククラウドでも実現できるため「AWS, Azure, Google Cloud, OCI」と回答し、全く関係ない質問については「Others」と正しく判定できていることが確認できます。

“Cloud Service Detector”エージェントのプロンプト
# Role
You are responsible for determining which public cloud the question is related to.

# Conditions
You must follow the instructions below:
1. Select one or more cloud providers from the following: AWS, Azure, Google Cloud, and OCI.
2. Please answer using only the names of the selected public clouds. For example: "AWS" or "AWS, Azure". Do not include any additional explanation.
3. If the question is not related to any public cloud provider, respond with "Others".

上記の3ステップのみで目標としていた役割を果たすエージェントを作成することができましたが、Azure AI Foundry Agent Serviceではその他に下記設定値を変更することでエージェントをカスタマイズすることが可能です。

  • ナレッジ:AIエージェントに様々なデータソースから得られる豊富なコンテキスト情報を提供する。Azure AI SearchやMicrosoft FabricといったオリジナルなデータからBing検索で得られるWebデータも参照できる
  • アクション:AIエージェントが決められたタスクを実行できるようになる。Azure Functionsと連携することでよりカスタマイズされたタスクを実行することが可能
  • 接続されたエージェント:AIエージェント間をコントロールするオーケストレーターや詳細なルーティングロジックを必要とせずに、マルチエージェントを構築する
  • モデル設定:TemperatureやTop Pを調整することで生成される回答の一貫性を調整する

 

Connected Agents機能を用いて簡易的なマルチエージェントを構築する

それでは、本題であるマルチエージェントを構築してみましょう。今回作るのは「パブリッククラウドに関する質問に対して、専門家の意見を取り入れて回答してくれる」エージェントです。

ユーザーと相対するエージェント“Public Cloud Professional”の役割は下記4つです。

  1. パブリッククラウドに関係しない質問は答えない
  2. パブリッククラウドに関係する場合は、どのパブリッククラウドの話か判断する
  3. 2で判断したパブリッククラウドについて、各専門家エージェントに質問する
  4. 各パブリッククラウドの専門家の意見をまとめて、回答を生成する

 

“Public Cloud Professional”エージェントのプロンプト
# Role
You are a support agent answering questions about public cloud services.

# Condition
You must follow the instructions below:
1. Start by translating the question into English.
2. Do not answer questions that are not related to public cloud services (e.g., AWS, Azure, Google Cloud, OCI).
3. If the question is related to public cloud services, select one or more cloud providers from the following: AWS, Azure, Google Cloud, and OCI.
4. Send the question to the public cloud expert agent identified in condition 3 and consult with them.
5. Aggregate the opinions from each public cloud expert and produce a final response.
6. You must translate the final answer into Japanese and respond in Japanese.

手順3の各専門家エージェントを呼び出すために、先ほど紹介したConnected Agents機能(接続されたエージェント)を利用します。


エージェント作成時の「接続されたエージェント」で、連携したいエージェントを選択して追加していきます。このとき、エージェントを呼び出す際の条件を詳細に記載することで、エージェント同士の連携を確実に行うことができます。

この「接続されたエージェント」に他エージェントを設定するだけで、複雑なルーティングやオーケストレーターなしでマルチエージェントの構築ができます。

試しに、他のパブリッククラウドについても専門家エージェントを追加して実際に質問を投げてみましょう。「LambdaとFunctionsのスケーラビリティ、対応言語、料金体系の違いを教えてください」というLambdaとAzure Functionsの比較検討のための質問を投げてみます。
結果としては、LambdaとAzure Functionsを比較した回答が生成されました。ここで注目すべきは、実際にエージェント同士が連携して回答を生成しているのかです。


Azure AI Foundry Agent Serviceはトレーシングの機能も充実しており、回答が生成されるまでのエージェントの動きを確認することができます。このトレーシングを覗いてみると、“Public Cloud Professional“エージェントが自身だけで回答を行うのではなく、“AWS Professional”と“Azure Professional”にも質問を連携していることが確認できます。

これで簡易的なマルチエージェントをあっという間に構築することができました。

 

Multi-Agent Workflows (2025年7月時点発表のみ) 

本記事では、Azure AI Foundry Agent ServiceのConnected Agents機能を用いたマルチエージェントの構築を紹介しました。ただし、簡易的なマルチエージェントを構築する際にはConnected Agents機能で十分ですが、さらに複雑なエージェント同士の連携を実現するためにエージェントを多段階で呼ぶような構築はできません。

例えば次に示す図のように、今回構築したエージェントをさらに細分化することで回答精度の向上を図ろうとしても、多段階でエージェントを呼ぶことはできないため、この構成の実現は難しいです。

しかし、より複雑なマルチエージェントを構築する機会もあると思います。そんなニーズに応えて、MicrosoftからMulti-Agent Workflowsという新機能の実装が発表されています。
Multi-Agent Workflowsを用いればより細かいエージェント同士の連携を指示できるようになるため、さらに複雑なタスクも処理できるマルチエージェントを構築できます。2025年7月現在まだ一般公開はされていませんが、続報を楽しみに待ちましょう!

 

おわりに

今回はAzure AI Foundry Agent Serviceでマルチエージェントを作成する方法についてご紹介しました。Microsoft Build 2025のKeynoteでも感じましたが、AIエージェントに簡単に触れられる環境が増えることで、多くのユースケースが集まり、AIエージェントが我々の生活にとって当たり前の存在になっていくのではないのでしょうか。

本記事が、少しでもAIエージェントを用いたアプリケーションのアイディアの広がりにつながれば幸いです。

 

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