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AI-DLC をチームで体験 ~ AWS ワークショップ「Unicorn Gym」参加レポート~

井上 雄揮 - Nomura Research Institute, Ltd.

はじめに

こんにちは、NRI の井上です。現在は、パブリッククラウド運営サービス「QUMOA」にて AWS を中心とした開発・運用業務に携わっています。

生成 AI によるコーディング支援はすっかり身近になりました。一方で、「コード生成は速くなったが、要件定義や設計は結局人間が考えている」「AI に任せると何が作られているのか分からず不安」と感じたことはないでしょうか。私自身も同じような課題を感じていました。

そんな中、2026年6月1日〜3日に開催された、AWS の開発手法「AI-DLC」をチームで体験するワークショップ「AI-DLC Unicorn Gym」に参加する機会がありました。

本記事では、AI-DLC とはどのような考え方なのか、ワークショップで何に取り組み、何を感じたのかをご紹介します。AI を使った開発の進め方を模索している方の参考になれば幸いです。

 

AI-DLC とは?

AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle、AI 駆動開発ライフサイクル)は、AWS が提唱した、AI 時代の新しい開発手法です。

aws.amazon.com

これまで開発で AI を使う方法は、コード補完やテストなど一部の作業を手伝ってもらう「AI 支援型(AI-assisted)」と、要件を渡して丸ごと作らせる「AI 自律型(AI-autonomous)」が中心でした。ただ、前者は人間の負担が依然として大きく、AI を狭いタスクでしか活用できません。後者は、人間がほとんど関与しないまま成果物が作られるため、「何が作られたのか分からない」といった状況に陥りがちです。

AI-DLC は、ちょうどその中間に立つ考え方です。AI をチームの一員として開発の最初から最後まで関わらせ、人間は検証・意思決定・監督の最終的な責任を保持します。

基本的な流れ

AI-DLC の基本は、「プラン → レビュー → 実行 → レビュー」というサイクルです。AI がプランを作り、人がそれをレビューし、AI が修正・実行し、最後に人が結果を確認します。この流れを繰り返しながら進めます。



この基本サイクルを、Inception(着想)→ Construction(構築)→ Operation(運用)の3つのフェーズに当てはめていきます。前のフェーズの成果が次の土台になりますが、一方通行ではなく、必要に応じて前のフェーズに戻ることもあります。



使い方

AI-DLC を実際に動かすためのルールファイルは、「aidlc-workflows」として AWS Labs から OSS で公開されています。専用ツールのインストールは不要で、ルールファイルをプロジェクトに置くだけで動作します。Kiro や Amazon Q Developer、Cursor、Cline、Claude Code、GitHub Copilot、Codex など幅広い AI コーディングエージェントに対応しており、今回のワークショップでは Claude Code を使用しました。

使い方はシンプルで、ルールファイルを開発したいプロジェクトのディレクトリに置き、チャットで「AI-DLC を利用して、…」と書き始めて指示するだけです。

github.com

 

AI-DLC で取り組んだこと

今回は、自分が担当している社内向け Web ポータルの改修に取り組みました。これまで Excel の申込書でやり取りしていた申請手続きを、ポータル上で完結できるようにする機能開発の一部を、AI-DLC を使って進めました。

具体的には、「必須項目の入力チェックの導入」「申込完了画面の新設」など、いくつかのテーマをあらかじめ用意しておきました。4人チームで、2人ずつのペアに分かれ(途中でペアの組み合わせも入れ替えながら)、各ペアが担当テーマについて Inception ⇔ Construction を繰り返し、3日間かけて複数テーマを開発しました。

実際の進め方をもう少し具体的に紹介します。要件を伝えると、AI-DLC はいきなり実装に入るのではなく、作業の中で決めるべき点が出てくるたびに、それを「多肢選択の質問」としてファイルに書き出してきます。こちらが選択肢で回答していくことで、要件や仕様の認識を AI とすり合わせることができます。下の例は、必須項目の入力チェックをどう動かすかについて、AI が確認してきた質問です。



こうして要所で認識をすり合わせ、内容が固まったら次の工程へ進み、最終的に実装(Construction)へと入っていきます。チャットでのやり取りではなく、ファイルに記録された質問に答えていく形のため、決めた内容が履歴として残る点も特徴のひとつです。

AWS に関するソリューション・事例はこちら

 

AI-DLC を体験して得た気づき

実際に AI-DLC で開発してみて、特に印象に残った点をまとめます。

要件整理の段階でも AI が役立った

印象に残ったのは、コードを書く場面はもちろん、その前の要件整理の段階(Inception)でも AI が力を発揮したことです。「ここはどう動かすか」を多肢選択の質問で詰めていけるので、自分でも気づいていなかった要件の曖昧さに気づかされることもありました。

さらに、文章だけでなく実際の画面モックを作らせて、実装に入る前に「イメージしていたものと違う」という認識のズレに気づくことができました。加えて、要件や仕様に変更が入ったときも、関連するドキュメントを一緒に直してくれるのが、とても楽でした。

人間の仕事は「レビュー」へ移っていく

AI-DLC では、実装そのものは驚くほど楽になりました。その一方で、人間の仕事は、AI のアウトプットをレビューし、その内容に責任を持つことへ移ったと実感しました。成果物の量が多く、確認が大変だったので、レビュー前の工夫として、変更内容を図解させるなど、AI に“見やすい形”で出させると、確認がぐっと楽になりました。高い品質を保ちながら効率的にレビューする方法については、まだ模索が必要だと感じました。

そして、レビューして納得いかなければ作り直せばよい、というのも大きな気づきでした。AI に作らせるコストは低いので、人が時間をかけたものは捨てづらくても、AI のアウトプットなら納得いくまで作り直せます。実際、2日かけて Inception から Construction まで進めたものを、最終日に一度まっさらにして作り直したチームも過去にあったそうで、気に入らなければ思い切って作り直す割り切りも有効だと感じました。

開発は速くなったが、任せきりにはできない

AI-DLC で進めていて強く感じたのが、スピードの速さです。なかでも驚いたのは、既存コードを把握する速さでした。リポジトリを読み込ませて「この要件で直したい」と伝えると、今のコードがどうなっていて、どこをどう直せばよいかを素早く特定してくれます。一人で開発すれば1日はかかりそうな作業も、1〜2時間ほどで済みました。

ただ、速いからといって任せきりにできるわけではありません。AI は放っておくと、確認する前に実装を進めようとするなど、こちらが意図しない動きをすることがありました。また、AI が一度に扱えるコンテキスト(前提情報)には限りがあるため、やり取りが積み重なると、前に決めたことがうまく引き継がれないこともありました。

こうした点には、各工程の節目で必ず人間が承認すること、そしてフェーズの切り替わり(たとえば Inception が終わったタイミング)で一度コンテキストをクリアし、必要な情報だけを渡し直すことが有効だとアドバイスをもらいました。速いからこそ、人間がどうレビューし、どう進めるかが大事になると感じました。

 

おわりに

本記事では、AWS の開発手法 AI-DLC と、それをチームで体験したワークショップ「AI-DLC Unicorn Gym」についてご紹介しました。

AI-DLC は、AI を一部の作業だけに使うのではなく、開発の最初から最後まで関わらせる一方で、要所では人間が判断して品質と方向性に責任を持つという開発手法です。この役割分担が具体的な手順に落とし込まれている点が、特に印象的でした。

今回は実際のプロジェクトの開発テーマを扱いましたが、テスト方法やプロジェクト特有の開発ルールなども取り込みながら、今後も活用していきたいと感じました。

本記事が、AI を使った開発の進め方を模索している方の一助となれば幸いです。

 

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