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AI活用は「チャット」から「エージェント」へ。推論の転換点に応える「プライベート生成AI/RAG環境」の構築と、その先の「プライベートAIエージェント環境」

AI活用は「チャット」から「エージェント」へ。訪れる推論の転換点

こんにちは。NRIの山田です。
私は普段、NRI社内向けにGPUリソースを提供する「プライベートGPUサービス」の運営・維持管理に携わっています。

生成AIの普及により、チャット形式での対話は当たり前のものとなりました。しかし今、AI活用は新たなフェーズ、「推論の転換点」を迎えようとしています。

これまでのAIが人間との往復のやり取りを重視していたのに対し、AIエージェントは、一つの問いに対して自律的に「思考(推論)」を重ね、タスクを完遂する能力を備え始めています。AIが単なる補助ツールを超えて、自ら考え業務を代行するようになるにつれ、その推論に要する計算リソースや処理量は、従来のチャット形式とは比較にならないほど膨らんでいくことが予想され、クラウドAIサービスの従量課金による「推論コスト」が際限なく増大しかねないという、新たな課題に直結します。

また、この「自律的に動くAI」を実務で本格的に活用しようとする際、大切になるのが機密情報の取り扱いです。AIによる生産性向上を実現するためには、社内機密である設計書などの開発リソース、さらにはお客様に関する情報といった内部ナレッジをインプットとして活用する場面が増えるからです。

一方、クラウドAIサービスにおいては、閉域網接続やオプトアウト設定を利用したとしても、データが組織の管理外を経由するという事実に変わりはありません。個人情報や顧客機密情報を扱う場合、情報の取り扱いに関する個別の合意形成が必要になるなど、全社的な展開やスピーディな導入において課題となることがあります。
これからのAIエージェント時代の到来を見据えたとき、企業には、「機密性の高いデータを安全に取り扱える環境」と、自律的な試行に伴う「推論コストの抑制」を両立する、バランスの良いインフラが求められます。

この記事では、NRIのデータセンター(DC)内に閉じ、外部との通信を遮断した状態でAIを利用できる「プライベート生成AI/RAG環境」の技術的エッセンスと、その先にある「プライベートAIエージェント環境」の重要性について解説します。

 

NRI DC完結型の「プライベート生成AI/RAG環境」

「プライベート生成AI/RAG環境」は、NRIが自前で調達・管理するGPUリソースを用い、物理的・ネットワーク的にNRIのデータセンター(DC)内に閉じたセキュアな環境として実装しています。
また、実務利用を支える機能として以下の2点を備えています。

  • ガードレールによるコンテンツ安全チェック
    ユーザーの入力とAIの応答をリアルタイムで監視し、不適切な内容や社内ポリシーに反するプロンプトを検知。システムレベルで安全な応答を担保します。

 

  • マルチテナント構成によるデータの論理分離  
    部署やプロジェクトごとにベクトルデータベースを論理的に分離。機密データが他者に参照されるリスクを抑え、適切なデータガバナンスを実現します。

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機密情報の保護と閉域ネットワーク利用を両立。広がる活用の可能性

プライベート環境だからこそ実現できること

「プライベート生成AI/RAG環境」は、外部ネットワークへの接続が制限されるような、機密性の高いデータを取り扱うシーンにおいて真価を発揮します。単に「機密情報を扱う」だけでなく、ビジネスの現場で求められる「確実なコントロール」を実現できる点が、本環境の大きな特徴です。

  • 機密性の確保と、業務に合わせた「挙動の安定」を自由にデザインする
    クラウドAIサービスでは、オプトアウト設定などの対策を講じても、外部仕様の変更や規約の更新といったサービス提供ベンダー側に依存する側面が残ります。そのため、ガバナンスの観点から重要データの投入をためらってしまうケースも少なくありません。本環境では、外部への通信を遮断した「守られた環境内」で全ての処理が完結するため、外部へ出すことが一切許されない重要データも安全に活用できます。
    また、AIモデルの自動的なアップデートによって回答のニュアンスが変わってしまうことは、実務の安定運用において課題となります。プライベート環境であれば、「どのモデルを、いつまで使い続けるか」をコントロールすることが可能です。これにより、特定のタスクにおける精度を一定に保つことができ、ビジネスの現場に「進化する利便性」と、それを支える「変わらない安心」を同時にもたらします。

  • 外部ネットワーク接続が制限された環境でのAI支援
    高い機密性が要求される金融系システムの本番環境や、物理的に隔離された運用管理端末室など、セキュリティ上の理由で外部ネットワーク接続を遮断している環境があります。こうした「閉塞環境」においても、NRI DC内のプライベート生成AI/RAG環境であれば導入が可能です。過去の障害ナレッジや設計書をRAGで取り込むことで、閉塞環境でも高度な作業支援を実現します

 

なぜ今、NRI DC内のプライベート環境なのか

クラウドAIサービスが主流の今、NRI DC内のプライベート環境を併用するのには、いくつか理由があります。

  • 従量課金からの解放と推論需要への対応
    AIエージェントが自律的に思考し、長時間稼働するようになると、推論トークン数は飛躍的に増大します。クラウドAIサービスの従量課金ではコストの予測が困難になりますが、自前で調達したGPUリソースを利用できる環境であれば、コストを気にすることなくAIを「使い倒す」ことが可能です。

  • オープンモデルの躍進  
    現在、自社環境に組み込める「オープンモデル」の性能は飛躍的に向上しています。かつては最先端の商用モデル(フロンティアモデル)との間に大きな実力差がありましたが、その距離は急速に縮まっています。
    QwenやDeepSeek、Gemmaといった最新のモデル群は、特定の能力において商用モデルに匹敵する水準に達しています。特にライセンスの柔軟性が高いモデルの登場は、企業にとって大きな転換点となります。法務的な制約をクリアしながら、最高水準の知能を自社専用のエージェントとして自由にカスタマイズできる環境が整ったのです。

 

その先にある「プライベートAIエージェント環境」に向けて

自律的に動くAIを、NRI 拠点・DCの安全なインフラで

私たちが目指す次のステップは、高度な推論能力と社内の独自ナレッジを併せ持ち、自律的に業務を遂行する「プライベートAIエージェント環境」の整備です。


NRIの拠点・DCからデータが出ることのない、安全・安心かつ従量課金の発生しない実行環境を整えること。これにより、機密情報を扱いながら複雑なタスクを24時間365日任せられる未来を描いています。
AIが「対話するツール」から「実行するパートナー」へと進化する推論の転換点。その基盤となる「NRI DC完結型」のプライベート環境構築を、これからも加速させていきます。

 

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