
2025年12月10日から 2026年2月15日にかけて「第 4 回 Agentic AI Hackathon with Google Cloud」が開催されました。本ハッカソンで見事、奨励賞の受賞を果たしたNRIの入社2年目の福岡 康大、村上 隆太、渕上 正浩、立見 有の若手チームにインタビューを行いました。開発したAIエージェントの詳細や、今後の展望について話を伺いました!

Q1:これまでのキャリア、現在のご担当業務を教えてください。
村上:私は入社後、大手小売業者様向けのエンハンス業務や保守運用業務に携わりながら、社内のR&DとしてAIエージェントの作成にも関わってきました。現在はサプライチェーン最適化を目指すPoCプロジェクトにも参画しています。
立見:私は現在、主に2つの業務を担当しています。1つ目は大手小売業様のR&D支援としてAIエージェントのプロトタイプ開発、2つ目は国内外の複数の小売業様向けの保守運用業務です。AIという先端技術と、システムの安定稼働を支える運用という、求められるものが大きく異なるプロジェクトに関わっています。
福岡:私は、村上さんや立見さんとは所属部署が異なりますが、二人が担当するR&D支援に参画していました。そこではAIエージェントの活用検討やシステム開発、提案活動などを担当しました。現在は、クラウド環境でのデータ分析基盤の構築や、発注提案業務に従事しています。
渕上:私は、金融業界のお客様を担当しています。アプリケーションと基盤の両面のエンハンスが主な業務です。金融業界では非常に高いセキュリティ準拠が求められるため、安全・安心なシステム運用に対応しています。

Q2:「第 4 回 Agentic AI Hackathon with Google Cloud」に参加されたきっかけを教えてください。
福岡:入社当初、メンバー全員が所属していた部署では、Google Cloud の資格取得が推奨されていました。その中でもこのメンバーは意欲的に勉強に取り組んでいましたが、座学だけでは知識が定着しにくいという課題があり、実際に手を動かして開発することの重要性を感じていました。
そのような状況下で、私が本ハッカソン(第3回開催時)を見つけ、声をかけたのが最初のきっかけです。全員が「ぜひやろう」と意気投合して参加しましたが、第3回では入賞には至りませんでした。その反省も踏まえ、次回に向けて継続的に活動しようと話し合い、今回の第4回となる本ハッカソンへの再挑戦を決めました。

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Q3:本ハッカソンで皆様が作り上げた「AIエージェント」について教えてください。
村上:私たちは、ART(美術)とASTERISM(星群)を組み合わせた「ARTESTERISM (アーテステリズム)」というアプリケーションを開発しました。これは、美術作品を起点に、大規模・中小規模の美術館、そこで働く職員、そして鑑賞者の三者を繋ぐプラットフォームです。
本プラットフォームでは、鑑賞者には、AIを活用することで個人の興味や知識レベルに合わせた「3段階のパーソナライズ音声ガイド」を提供します。さらに、スライダーを用いた直感的なUIで作品の好みを入力してもらうことで、その人の感性に近い作品を所蔵する中小規模の美術館をリコメンドする機能を備えました。これにより、資金力のある大規模な企画展に集中しがちな人流を、地方の常設展や知られざる名作を持つ美術館へと回遊させることを狙っています。
また、美術館の職員向けには、これまで可視化が難しかった「どの作品がどのような属性の人に支持されているか」というデータをダッシュボード形式で提供します。AIは、これらの音声ガイドの文章生成や音声化、そして精度の高いリコメンドエンジンとして活用しています。
「ARTESTERISM (アーテステリズム)」の概要:
https://zenn.dev/akakura16/articles/9437cc784031c5

右:鑑賞者が鑑賞中に使用するパーソナライズ音声ガイド画面
Q4:取り組むにあたって特に難しかった点や、それをどのように乗り越えたかを教えてください。
渕上:一番難しかったのは「課題の新規性」を見出すことでした。ハッカソンの開催も4回目となり、簡単に思いつくテーマ/アイデアは既に出尽くしています。そこで約1ヶ月間、メンバーそれぞれの日常や趣味を深掘りしながら議論を重ね、全員が納得できる「美術」というテーマに辿り着きました。
技術面では、2つの大きな課題を克服しました。1つ目は、前回の反省点だったUIの質と反応速度の改善です。これにはフロントエンドに Google のFirebaseを採用することで、スムーズな操作感を実現しました。2つ目はリコメンド機能の実装手法です。画像で比較するか、AIによるテキスト説明で類似性を取るかを検討していた際、テキスト説明で類似性を測る手段が適切だと話し合っていました。その実装手段として、ハッカソン開催直前の12月に Google Cloud が発表したばかりの最新エンベディング技術を見つけ、即座に採用しました。これにより、コストと時間の制約がある中で、効率的かつ高度なデータマネジメントを実装することができました。

Q5:受賞に繋がったポイントや戦略はどのようなものでしょうか。
立見:評価基準の中でも特に「課題の新規性」を最優先したことが、受賞の大きな要因だと考えています。多くの人が潜在的に感じていながら、まだ表面化していない課題を掘り下げ、それに対してAIを用いた独創的なソリューションを提示できた点が、高く評価されたのだと感じています。
福岡:もう一つのポイントは「実装品質と拡張性」です。前回の反省を活かし、コストと品質のバランスを意識しました。将来的な拡張を考えれば高コストな設計は避けるべきですし、マネージドサービスを賢く活用しなければ、限られた時間で他の機能を開発できません。最新技術を最適なタイミングで取り入れ、技術コストと品質の面で妥当な判断を下せたことが、実現可能性の評価に繋がったのだと思います。審査ポイントから逆算して、自分たちなりの回答を明確に用意して臨めたのが良かったと思っています。

Q6:今回の参加によって成長できた点や、学びがあれば教えてください。
村上:自ら課題を発見し、解決へのアプローチを策定する力が養われました。AIは多くのアイデアを提示してくれますが、それを鵜呑みにするのではなく、自分の経験や感性と組み合わせて「納得できるもの」に昇華させる重要性を再認識しました。
立見:短期間でプロダクトを形にするための「決断力」と「タスク管理能力」が向上したと感じています。限られた納期の中で何に優先順位を置くのかという判断を下す経験は大きな糧となりました。
福岡:私は常に最新の技術動向をキャッチアップし続ける重要性を学びました。要件が定まっている実業務では最新技術をすぐに導入することが難しい場面もありますが、IT企業の一員として新しい技術に目を向け続ける姿勢が、業務の質の向上に繋がると感じました。
渕上:課題設定における「対話の重要性」を実感しました。今回でいうと美術館によく行く人の意見をそのまま受け入れるのではなく、メンバー間で疑問をぶつけ合い、納得いくまで対話を重ねることで、より良いものへと進化させるプロセスを経験できたことが大きな学びでした。

Q7:今回の経験を踏まえて、今後の業務にどう活かしていきたいですか。
渕上:日々の業務のなかで、指示されたことをこなすだけではそれ以上の価値は生まれません。今回ハッカソンで要件を突き詰めたように、お客様が「何を考え、何を求めているのか」という本質を汲み取り、直接の対話を通じて価値を最大化できるようにしていきたいです。
福岡:新しい技術が次々と登場する今、情報の正しさを見極める「選球眼」が不可欠だと感じています。膨大な情報から必要な技術を的確に取捨選択し、最技術を適切に組み合わせてお客様に最適な提案ができるエンジニアを目指したいです。
立見:私が担当しているAIエージェントのプロトタイプ開発は、まさに短期間でお客様のニーズを形にする業務です。ハッカソンで磨かれた「限られた時間内での決断力」や「タスク管理スキル」を、日々の現場で発揮していきたいと考えています。
村上:実務での開発経験を積み重ねることはもちろんですが、与えられた要件に対しても「自分の頭で課題の本質と向き合い、アイデアを出していく」姿勢を大切にしたいです。その結果として、チームやその先にいるお客様に対して、少しでも多くの価値を還元していけるよう努めていきたいです。

Q8:atlaxブログの読者やNRIのお客様にメッセージがあれば、最後にお願いします。
村上:ブログをご覧いただきありがとうございます。私たちは若手主体のチームではありますが、一人ひとりが熱意を持って開発に取り組んでいます。この活動で培った知見や経験を武器に、お客様のビジネスをさらに発展させられるようこれからも精進していきます。
立見:まずはこのハッカソンに誘ってくれたメンバーに心から感謝したいです。もしこのようなハッカソンへの参加を迷っている方がいれば、ぜひ勇気を持って挑戦してみてほしいと思います。その一歩が、大きな成長に繋がるはずです。
渕上:実務とは別に、最新技術に触れる時間を自発的に作ることは非常に大切だと考えています。こうした研鑽が、将来お客様へ高い付加価値を提供するための強固な土台となると思います。業務にも良い影響を与えられるよう、これからもこの4人で切磋琢磨し続けていきたいです。
福岡:このチームは、新人研修の合間に「一緒に何かやりたいね」と話し合ったことから始まりました。業務で各々のポジションが確立していくようになっても、継続的にチャレンジできるこの場所は、私にとって非常に大切な存在です。実業務とこのチームでの活動、双方向で良いシナジーを生み出し、高め合える関係であり続けたいと思います。
編集部の感想
今回のインタビューを通じて最も印象に残ったのは、入社2年目という若手でありながら、自ら課題を見つけ、最新技術を駆使して解決に挑む4人の行動力とチームワークです。
AIを単に「便利なツールとして使う」ことを目的とするのではなく、「美術館の訪問者・勤務者の双方にメリットのあるサービスの構築」という、本質的かつ新規性のある社会課題の解決手段として昇華させた視座の高さには、NRIのエンジニアとしての頼もしさを感じました。また、AIを最大限活用しながらも、自分たちの「納得感」やメンバー間の「対話」を重視し、技術と人間らしさをうまく融合させている点も素晴らしいポイントです。
目まぐるしく変わる最新技術の波を楽しみながら、仲間と共に切磋琢磨し続けるチームメンバーが、今後NRIの新たな価値創造を牽引していく姿に大いに期待しています。
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