
こんにちは、atlax編集部 中の人です。
2026年3月9日、AWSのバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストであるJeff Barr氏とNRI社員4名(AWS Security Heroの称号を持つ吉江 瞬、社内外のコミュニティづくりに携わる伊藤 昌明、中村 泰晴、勝村 友博)によってコミュニティづくりに関する意見交換会が実施されました。この意見交換会は2024年度にはじまり2回目の開催となります。

当日は、NRIのエンジニアや社内外のコミュニティ運営に携わるメンバーなどが集まり、「生成AIと開発現場のリアルな関わり方」や「これからのコミュニティ運営のあり方」について、議論を交わしました。本記事では、Jeff氏によるプレゼンテーション「Building a GenAI-Driven Developer Organization(生成AI主導の開発組織の構築)」の内容と、参加者との対談の様子をご紹介します。
Jeff Barr氏について
AWSのバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストであるJeff氏は、2004年にAWSブログを初めて以来、AWSサービスに関する最新かつ有益な情報をブログで発信し続けています。
今回は毎年登壇されているJAWS DAYS 2026の基調講演のために来日しました。
JAWS DAYSについて
JAWS DAYSは主催JAWS-UG、後援アマゾンウェブサービスジャパン合同会社で行われる日本のAWSユーザグループにおける最大のイベントです。全国からAWSを利用するユーザが一同に集まり、最新技術からビジネス、ライフスタイルなどAWSに関わる幅広いテーマでセッションが実施されます。
AWS初心者から上級者までのエンジニア、経営者やマーケティング担当者等、職種や業態・会社規模を問わず、新たな人とのつながりを作る機会を提供しています。
Jeff氏のプレゼンテーション~生成AI主導の開発組織の構築~
Jeff氏は、AWSの最前線における生成AIの活用事例を交えながら、今後のソフトウェア開発の「何が変わり、何が重要になるのか」を以下の4つのポイントにわけて説明しました。

1. 生成AIによる圧倒的な開発スピードの実現(Project Mantleの事例)
最初に、Amazon Bedrockの基盤インフラを構築する「Project Mantle」の事例を紹介しました。このプロジェクトでは、当初ローンチまで1年、さらに機能追加に1年で完了させる計画でしたが、増員をせずに進捗スピードをあげるため、生成AIを活用する手法に切り替えました。その結果、1ヶ月分の作業をわずか3日で完遂させ、最終的に76日でローンチすることに成功しました。この開発では、エンジニアの生産性が通常の10倍から20倍に跳ね上がり、生成AIが開発に与えるインパクトの大きさが示されました。
2. スピード向上に伴う新たなボトルネックとアムダールの法則
次に、生成AIを活用したプログラムの作成について話しました。プログラムの行数に対する不具合の発生率が変わらない状態で、AIでプログラムを書くスピードが劇的に上がり、完成するコードの量が10倍、20倍に増えることで、結果として深刻な不具合が本番環境に紛れ込む頻度も高くなってしまいます。この課題を解決するには、人間が目で確認する従来のテスト手法だけでは難しく、数学的な理論を用いてプログラムが正しいことを証明する自動推論や形式手法といった、より高度で機械的な検証アプローチが不可欠になると説明しました。
また、AIによって「コードを作る工程」だけが極端に速くなると、今度はその後の内容確認やシステムへの反映といった周辺作業が全体のスケジュールを遅らせる要因になってしまいます。一部の工程だけをスピードアップしても全体の効率は上がらないというアムダールの法則に直面するため、開発の全工程をスムーズにつなげる仕組み作りが重要だと伝えました。
3. チームのあり方とアプリケーションの「短命化」
生成AI時代には、チームのあり方や開発プロセスを変化させる必要があることについて述べました。意思決定をより迅速に行うため、「超少数精鋭チーム」として一人一人が判断を下し続ける「ハッカーハウス」のようなチームが求められるようになると話しました。また、開発プロセスでは「一つのアプリを大切に長く保持する」というこれまでの考えから、「必要に応じてゼロから作り直すもの」へと変化すると述べました。
Jeff氏は、上記の変化に伴いアプリが作りやすくなるからこそ、収集する『データ』や『スキーマ』の価値がこれまで以上に高まり、貴重なものになると強く強調しました。
4. 次世代の開発者に求められる5つのスキル
かつてのように細分化された専門性を持つのではなく、これからの開発者はより適応力のある「ジェネラリスト」になる必要があると述べられました。Jeff氏は次世代のスキルとして以下の5つを挙げています。
- Observation(観察力): 周囲を見渡し、顧客のビジネスやユースケースを理解し、細部にこだわること。
- Communication(コミュニケーション): AIツール、同僚、顧客に対して的確に表現し、読み書きの能力を高めること。
- Cooperation(協調性): チームプレイヤーとして同じ場所で連携すること
- Concentration(集中力): 精神的な明晰さを保ち、複数のAIエージェントを管理すること
- Daily Learning(日々の学習): 毎日何かを学ぶことを習慣化し、学んだことをチームで共有すること。
第2部:Jeff氏とNRI社員との対談
Jeff氏のプレゼンテーション後は、NRI社員と日頃の業務やコミュニティ運営に関する議論が行われました。一部をご紹介します。
勝村:ソフトウェアが短命化していくというお話がありましたが、私たちの業務ではソフトウェアの「保守性」も重要視しています。短期間で多くのソフトウェアを開発する時代になっても、保守性は依然として重要でしょうか。
Jeff氏:保守性は依然として重要です。しかし、コードの「種類」を分けて考える必要があります。
Amazon Bedrockやシステムの中核となるマイクロサービスのような、いわば「基盤(インフラ)」となるコードは、長年にわたって使い続ける頑丈な土台でなければなりません。ここには高い耐久性と、長期的な手入れが求められます。
一方で、その土台の上で作られる「アプリ」などのレイヤーは、流行や必要に応じて作り替え、使い終わったら捨てるような、柔軟かつ短命なコードになっていくでしょう。
つまり、「重厚な基盤部分は徹底的に作り込み、その上のアプリ部分は軽快に入れ替えていく」という、役割に応じた使い分けが重要になると考えています。
中村:私たちが実施している勉強会には、社外の方や、技術イベントに参加する自信があまりない初心者の方も参加してくれています。このような方々がもっと積極的にコミュニケーションを取ったり、イベント運営に関われるようにするにはどう促すべきでしょうか。
Jeff氏: 新しい人が入ってきたときに「自分もこのグループの一員なんだ」と感じられるよう、運営側が努力する必要があります。過去によくあった「閉じたサークル」ではなく、物理的にも精神的にも「あなたの新しい視点を聞きたいです」と迎え入れる雰囲気を意図的に作ることが大切です。
例えばアクションを起こしてくれた人には、「良い質問ですね。どんな疑問も歓迎します」と声をかけるといった小さな積み重ねが重要です。さまざまな場所で目にする『よくある質問(FAQ)』も、もともとは誰かが最初に投げかけてくれた『新しい質問』から始まったものです。初めての参加者がそこで良い体験をして次のミーティングにもう一度参加してくれるか、嫌な思いをして二度と戻ってこないか、最初の小さなやり取りが決定づけるのです。
勝村:単なる勉強会にとどまらず、ソフトウェアなどのプロダクトを生み出す新しいコミュニティを作りたいと考えています。それが将来的にNRIの公式プロダクトになったり、オープンソースプロジェクトになったりするよう後押しするには、どうすればよいでしょうか。
Jeff氏: 非常に素晴らしいアイデアですね。その目標を実現するには、まずプロジェクトの理念に深く共感し、初めの熱意や方向性がブレないように守り抜ける「中心メンバー」が必要です。そして、「私たちが最終的に何を作りたいのか」という揺るぎない目標と、それを言語化した明確な方針を掲げることが重要になります。
また、現在は生成AIが私たちの作業効率を大きく引き上げてくれます。そのため、プログラミングを行うエンジニアだけでなく、コミュニティを盛り上げる人など、様々なスキルを持つ多様な人たちをプロジェクトに巻き込んでいけるとよいでしょう。

まとめ
今年のJeff Barr氏との意見交換会では、生成AIの台頭によって激変するシステム開発のリアルな現場感と、それに伴ってエンジニアに求められるスキルの変化について学ぶことができる場となりました。アプリケーションの構築が容易になり「短命化」する一方で、強固なインフラの設計やデータの品質維持の価値はますます高まっています。そして何よりも、AIを使いこなすための「的確なコミュニケーション能力」や「日々学び、チームで共有する姿勢」が、これからのエンジニアにとって不可欠であるというメッセージは、参加したNRI社員たちも深く頷いていました。
また、コミュニティを運営していく上での「誰もが参加しやすいオープンな場づくり」の重要性についても再定義される機会となりました。
今回得られた知見を活かし、NRIはこれからも社内外のコミュニティを盛り上げ、新しい価値を生み出すプロダクト開発やエンジニアの育成に繋げていける貴重な機会になったと思います。
引き続きatlax blogsでは、最新技術の解説や実践的なインタビューを通じて、読者の皆様の業務やビジネスに役立てていただける情報発信に努めてまいります。
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