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Strands AgentsによるRAGを活用したAIエージェントの実装例

はじめに

こんにちは、NRIの飯倉です。
所属する部署では、AIソリューションの開発や導入の支援を担当しています。
生成AIの登場以降、企業では保有するドキュメントを対象とする検索拡張生成(Retrieval-Augmented Generation: RAG)の利用が普及しました。企業固有のドキュメントを活用するRAGは、一般的な知識しか持ち合わせていないLLMの能力を補完する手法として有効であることが知られています。

筆者はこれまで、自社サービスのヘルプデスクだけでなく、社外のお客様が直接利用されることを想定したRAGベースのチャットアプリケーションの開発と検証を推進してきました。現在は、RAGを1つのツールとして活用し、他のツールと連携させることで、より複雑な業務の省力化を目指すAIエージェントの開発に取り組んでいます。
本記事では、プロトタイプとして実装した、AWS環境におけるRAGを活用してプレゼンテーションファイルを自動生成するAIエージェントについて紹介します。

 

RAGを活用したAIエージェント

RAGに次ぐ新たなトレンドとして、AIエージェントが注目されています。
AIエージェントは、与えられた目標を実現するために、AIが自ら計画を立てて、必要なツールを選択し行動する自律的なシステムです。AIエージェントに、特定のドキュメントを検索して情報を取得するRAG機能を、ツールとして与えることも可能です。

 

Naive RAGとAgentic RAG

ユーザの質問に関連するドキュメントを検索して、回答する処理が固定されている最も単純なRAGの構成がNaive RAGと呼ばれるのに対して、AIエージェントがドキュメントの検索処理の実行を動的に判断する構成はAgentic RAGと呼ばれます。
表1に示すとおり、Agentic RAGは自律的な計画に基づいて行動するため、検索処理が複数回実行されるなどコストが高くなる傾向があります。そのため、用途に応じて適切な構成を選択することが重要です。たとえば、FAQへの回答や情報検索といった単純なタスクでコストや速度を優先する場面ではNaive RAGを、より複雑なタスクで柔軟性や精度を優先する場面ではAgentic RAGを採用するなど、目的に合わせて使い分けることが求められます。

表1:Naive RAGとAgentic RAGの比較


AWSに関するソリューション・事例はこちら

 

AIエージェントの構成

Agentic RAGでは企業特有の情報を活用しながら、他のツールと連携させることで、より高度な業務の省力化を目指すことができます。
今回は、自前のデータベースを検索対象とするAgentic RAGの実装例をご紹介します。このAIエージェントは、他のツールを併用しながらユーザのリクエストに応答することの動作確認を目的としています。具体的には、検索対象とするドキュメント群から情報を抽出し、プレゼンテーションファイルを作成するAIエージェントです。
AWS環境において、Strands Agentsライブラリを用いてAIエージェントを実装しました。Strands AgentsはAWSが提供するオープンソースのAIエージェントフレームワークです。AWS Bedrockなどのマネージドサービスとシームレスに連携するように設計されており、AWS環境でAIエージェントを構築する際の開発効率を大幅に向上させることができます。
実装したAIエージェントのアーキテクチャ図は下記の通りです。



LLMとして、Amazon BedrockのAnthropic Claude Haiku 4.5を利用しています。また、AIエージェントに付与した2つのツールは以下の通りです。

  • ドキュメント検索ツール
    Amazon OpenSearch Serviceで検索し、RAGの機能を提供するツール
  • プレゼンテーションファイル作成ツール
    Marp CLI を実行し、プレゼンテーションファイルを自動生成するツール

 

RAG機能としてのドキュメント検索ツール

今回実装したドキュメント検索ツールでは、一般公開されているデジタル庁の文書を検索対象として用います。これらの文書には、WordやExcel、 PowerPoint、PDFファイルなどの複数のタイプが混在しています。実際の業務でも様々なフォーマットのドキュメントが用いられることを想定し、ある程度の複雑さを持ったドキュメントで検証しました。これらのファイルに前処理を実行して、OpenSearchに登録しました。

AWSでRAGを構築する方法の1つとして、Amazon S3 VectorsをAmazon Bedrock Knowledge Basesのベクトルストアとして利用する方法があります。Amazon S3 Vectorsでは画像や動画、ドキュメントなどの非構造データを変換したベクトル埋め込みデータを低コストで保存でき、費用対効果の高いRAGアプリケーションを開発できます。
一方で、今回のドキュメント検索ツールでは、ベクトル検索だけでなく全文(キーワード)検索についてもサポートするために、Amazon OpenSearch Serviceを選定しました。Reciprocal Rank Fusion(RRF)アルゴリズムに基づくハイブリッド検索の実装や、リランクモデルとしてAmazon BedrockにおけるCohere Rerank 3.5モデルの適用などにより、検索精度の向上を図りました。

 

AIエージェントの動作例

Reactで実装したフロントエンドアプリケーションから指示を送信して、AIエージェントの挙動を確認します。

下記は、アプリケーションの操作画面です。ユーザの質問に対して、AIエージェントがRAGツールで関連するドキュメントを検索し、取得した情報をもとにプレゼンテーションファイルを自動生成する様子が確認できます。



そして、下記は実際に自動作成されたプレゼンテーションファイルです。検索結果を踏まえた内容がプレゼンテーションファイルとして出力されていることを確認できました。

 

業務省力化の可能性

今回は、ドキュメント検索ツールとプレゼンテーションファイル作成ツールの2つのツールを与えたAIエージェントを実装しました。ほかにも、業務内容に応じて適切なツールを与えることで、より高度な業務の省力化を目指すことができます。

表2:AIエージェントに与えるツール例

また、本記事のAIエージェントは1つのエージェントにツールを与えるシングルエージェント構成でしたが、より複雑なタスクを処理させる場合は、役割の異なるAIエージェントを複数構成するマルチエージェント構成も有効な選択肢になります。

マルチエージェント構成は、シングルエージェントと比較して、タスクの分散処理や専門化が可能であり、より高度な業務の省力化を実現できる一方で、エージェント間の連携や調整のために適切な設計と管理が必要になります。さらに、処理時間や消費トークン数などのコストの増大も懸念されるため、業務目的に応じてAIエージェントの構成を適切に選択することが重要です。

 

まとめ

AIエージェントに最適なツールを与えることで、業務の省力化・高度化の可能性は大きく広がります。特にRAGは、企業固有のドキュメントを活用する上で非常に有効なツールとして働き、企業の業務に特化したAIエージェントを構築するうえで重要な手段です。

生成AIの発展に伴い、「どのような業務をAIに任せるか」という検討がますます重要になっています。NRIでは、多岐にわたる業界のお客様にAIソリューションをご提案すべく、最先端のAI技術の調査および研究開発を積極的に行っています。エンタープライズ向けのRAGやAIエージェントの開発導入だけでなく、業務の省力化や高度化の実現イメージの検討段階からご支援させていただきます。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

 

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