

はじめに
こんにちは、NRIの下津と石川です。
私たちは、本番作業の統制を確保するためのAWSを用いたサービスの維持管理を担当しています。
昨今、RAGの発展からAIエージェントの開発が進む中で、クラウド上でのリソース構築の速度も加速しているように感じます。
「もしAIがクラウド上でのリソース構築まで代わりにやってくれたら、業務効率がさらに上がるのでは?」
今回はそんな発想のもと、AWSや生成AIの初学者でも30分程度で実装できる、MCPサーバを使ったAIエージェントの構築方法をご紹介します。
MCPサーバを実装してみたきっかけ
私たちのチームでは、クラウド技術や生成AIを活用したサービスを提供しています。私たち自身AWSの経験が浅く、生成AIの知識もまだまだ未熟ですが「生成AIでクラウド開発を効率化できないか?」と思い、今回の検証を始めました。
構築したもの
作成したリソースは以下3つとなります。
- EC2:Amazon Q Developer CLI(以下、Q Developer CLI)をインストールし、自然言語による操作を実現
- NAT Gateway:プライベートサブネット内のEC2がインターネットにアクセスするための経路
- VPC Endpoint:EC2がSystems Manager(SSM)にアクセスできるようにするための内部接続

構築手順は以下の通りで、とてもシンプルに実装することができました。
- EC2にSSM接続可能な環境を構築
- Q Developer CLIをインストール
- MCPサーバを設定
- 自然言語で環境構築を実行
実際の構築手順
1:EC2にSSMする環境作成
1-1:VPC・サブネット・EC2を作成
AWS Management ConsoleからVPCを作成し、2つのサブネット(パブリック/プライベート)を用意します。
プライベートサブネット上にAmazon Linux 2023のEC2インスタンスを作成します。
1-2:Session Manager(SSM)を設定
EC2の設定をするために、Session Managerを設定します。
まず、VPCの「DNSホスト名を有効化」にチェックを入れます。

次に、VPCエンドポイント用のセキュリティグループ(SG)を作成します。
SGのインバウンドルールにて、作成したEC2からのHTTP/HTTPS通信を許可します。

そして、Session Managerを設定するために、以下の3つを許可するVPCエンドポイントを作成します。(先ほど作成したVPCエンドポイント用のSG内に作成します)
- com.amazonaws.<region>.ssm
- com.amazonaws.<region>.ssmmessages
- com.amazonaws.<region>.ec2messages
1-3:IAMロールの作成
EC2内のSSM AgentがSession Managerとのセッションを確立できるよう、以下のマネージドポリシーをアタッチしたIAMロールを作成します。
・AmazonSSMManagedInstanceCore

作成したIAMロールをEC2にアタッチします。
1-4:Session ManagerでEC2にSSH接続
EC2を再起動し、「AWS Systems Manager」→「セッションマネージャー」に移動します。
「セッションの開始」→「ターゲットインスタンス」にEC2が表示されています。
EC2を選択し、「セッションの開始」を押下すると、EC2に接続できます。
※もしここで接続できない場合、ルートテーブルの設定が原因の可能性があるため、3-2実施後に改めて接続できるかをご確認ください。

2:Q Developer CLIのインストール
2-1:NAT Gatewayを設定
Q Developer CLIをインストールするために、EC2からインターネットへアクセスする必要があります。
EC2を作成していないサブネット上にNAT Gatewayを作成します。
作成後の構成図は以下になります。

2-2:ルートテーブルを設定
プライベートサブネットのルートテーブルをサブネット内はlocalに、それ以外はNAT Gatewayをターゲットに設定します。
|
送信先 |
ターゲット |
|
0.0.0.0/0 |
(NATGateway) |
|
(VPCのCIDR) |
local |
パブリックサブネットのルートテーブルをサブネット内はlocalに、それ以外はインターネットゲートウェイをターゲットに設定します。
|
送信先 |
ターゲット |
|
0.0.0.0/0 |
(インターネットゲートウェイ) |
|
(VPCのCIDR) |
local |
2-3:Q Developer CLIをインストール
ec2-userにてQ Developer CLIを実行したいので、ec2-userにてログインし直します。
以下のコマンドを実行してec2-userにパスワードを設定します。
sudo passwd ec2-user
su - ec2-user

それでは準備が出来たので、ようやくQ Developer CLIをインストールします!
参考:
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/amazonq/latest/qdeveloper-ug/command-line-installing-ssh-setup-autocomplete.html
以下のコマンドを実行し、glibcバージョンを確認します。
ldd --version

バージョン2.34なので、以下のコマンドを実行します。
curl --proto '=https' --tlsv1.2 -sSf "https://desktop-release.q.us-east-1.amazonaws.com/latest/q-x86_64-linux.zip" -o "q.zip"
![]()
インストールできたので、インストーラを解凍します。
unzip q.zip

インストールプログラムを実行します。
./q/install.sh

認証するために、記載のURLにアクセスします。



ブラウザ上でアクセスを許可すると、ログインできます。

これでQ Developer CLIをインストールできました。以下のコマンドでAmazon Qを開始してみます。
q chat

この状態で、自然言語でAmazon Qとチャットすることができます。

この対話モードを終了したいときは以下のコマンドを実行します。
/quit

3:MCPサーバを設定
では、Q Developer CLIをEC2にインストールできたので、AWS公式のドキュメントサーバをMCPとして登録します。
参考:
https://awslabs.github.io/mcp/servers/aws-documentation-mcp-server/
ディレクトリを作成し、作成したディレクトリ下にMCPサーバを指定するjsonファイルを作成します。
mkdir -p ~/.q
vim ~/.q/mcp.json
{
"mcpServers": {
"awslabs.aws-documentation-mcp-server": {
"command": "uvx",
"args": [
"awslabs.aws-documentation-mcp-server@latest"
],
"env": {
"FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR"
},
"disabled": false,
"autoApprove": [
"read_documentation"
]
}
}
}
先ほど格納したJsonファイルからMCPサーバ設定をインポートします。
qchat mcp import --file ~/.q/mcp.json global

では、設定済みのサーバを一覧表示するコマンドを実行してみます。
q mcp list

先ほど記載したMCPサーバが登録されています!
次に、Python環境を準備します
参考:
https://docs.astral.sh/uv/getting-started/installation/
Linuxなので以下のコマンドを実行します。
curl -LsSf https://astral.sh/uv/install.sh | sh
sudo dnf install -y python3.11 python3.11-pip
では、再度Amazon Qを起動してみましょう。
q chat

この状態では、AWSの最新ドキュメントを参照することができます。
実際に、最新のドキュメントを参照しているかどうか確認してみます。

~~~一部省略~~~

このように、最新のドキュメントを参照して回答していることが分かります!
4:実際に自然言語で環境構築
では、Amazon Qに環境構築させるステップに入ります。
4-1:IAMロールにて、環境構築権限を付与
AWS環境を構築するのはEC2サーバなので、環境を構築する権限のIAMロールをEC2に付与します。
今回は、VPCの作成権限のみを付与します。
以下のIAMポリシーを作成します。
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": [
"ec2:CreateVpc"
],
"Resource": "*"
}
]
}
作成したIAMポリシーを、1-3で作成したIAMロールに追加で付与します。

これで、EC2にVPCの作成権限が付与できました。
4-2:MCPサーバの追加
今回はVPCの作成のみですが、今後VPC以外を作成したくなった時を考えて、リソースごとにファイル分割します。
(main_server.pyより各リソース作成用のPythonファイル(aws_vpc.pyなど)を呼び出す構成となります)
まず、main_server.pyを作成します。
mkdir -p ~/mcp_servers
cd ~/mcp_servers
vim main_server.py
from fastmcp import FastMCP
from aws_vpc import register_vpc_methods
server = FastMCP("aws-admin-mcp")
register_vpc_methods(server)
if __name__ == "__main__":
server.run()
参考:
https://gofastmcp.com/getting-started/quickstart
次に、VPCを作成するためのモジュールを格納したPythonファイルを作成します。
vim aws_vpc.py
import boto3
def register_vpc_methods(server):
@server.tool()
def create_vpc(cidr_block: str):
"""
Create a VPC with the specified CIDR block.
This tool creates a new VPC using the AWS EC2 service.
"""
session = boto3.Session()
region = session.region_name
ec2 = boto3.client("ec2", region_name=region)
resp = ec2.create_vpc(CidrBlock=cidr_block)
vpc_id = resp["Vpc"]["VpcId"]
return {"vpc_id": vpc_id, "cidr_block": cidr_block, "region": region}
参考:
https://boto3.amazonaws.com/v1/documentation/api/latest/guide/session.html
https://boto3.amazonaws.com/v1/documentation/api/latest/reference/services/ec2/client/create_vpc.html
そして、4章で作成したMCPサーバをmcp.jsonに追記します。
(Amazon Qにmcp.jsonをインポートすることで、Amazon Qが4章で作成したMCPサーバを呼び出せるようになります)
vim ~/.q/mcp.json
{
"mcpServers": {
"awslabs.aws-documentation-mcp-server": {
"command": "uvx",
"args": [
"awslabs.aws-documentation-mcp-server@latest"
],
"env": {
"FASTMCP_LOG_LEVEL": "ERROR"
},
"disabled": false,
"autoApprove": [
"read_documentation"
]
},
"aws-admin-mcp": {
"command": "python3.11",
"args": [
"/home/ec2-user/mcp_servers/main_server.py"
],
"env": {
"FASTMCP_LOG_LEVEL": "INFO"
},
"disabled": false,
"autoApprove": [
"create_vpc"
]
}
}
}
必要ライブラリをインストールします。
python3.11 -m pip install fastmcp boto3
MCPサーバをAmazon Qに認識させます。
qchat mcp import --file ~/.q/mcp.json global –force
q mcp list

4-3:自然言語でVPC作成
それでは、自然言語でVPCを作成してみましょう。
チャットを開始します。
q chat
今回はバージニア北部リージョンに作成します。
バージニア北部にvpcを1つ作成して
途中で許可を求められるので許可すると、VPCが作成されます!


おわりに
今回は、AWSや生成AIの初学者でも簡単に構築できるAIエージェントの実装を紹介しました。30分程度で実装することができるので、AWSや生成AI学習の最初の一歩として是非ご活用いただけますと幸いです。
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