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NRIの先進テクノロジーに関する取り組み ~IoTシステムにおける大量画像データ処理~

IT基盤技術戦略室

小売・製造、金融・公共をはじめ、幅広い業界において「先進技術を活用してビジネスモデルを変革(DX)し、お客さまへ価値提供していきたい」というテクノロジー活用への期待が高まっています。一方、その期待に反して、技術変化のスピードが速く、技術キャッチアップやその活用が難しいといった悩みもお聞きします。

そのような声にお応えするため、株式会社野村総合研究所(NRI)では「潜在的な顧客ニーズ発の技術調査」「技術動向を見据えた先進技術の早期評価「獲得した技術の事業適用」に継続的に取り組んでいます。このような活動を通して、NRIは専門知識を用いて企業様のビジネスとテクノロジーの架け橋となり、DX実現まで伴走します。

このブログでは、NRIで推進している先進的な技術獲得の取り組みについて、ご紹介していきます。今回は、「IoTシステムにおける大量画像データ処理」に関する調査研究の成果をピックアップしました。

 

IoTシステムにおける大量画像データ処理

デジタル社会の実現にむけて、車の自動運転や医療現場でのバイタル情報の活用などIoTシステムを導入するケースが増加しています。IoTシステムでは、IoT機器で取得したデータをAIなどを活用して高度な分析を実施する際、CPUやメモリなどのシステムリソースを多く必要とします。特に高精細な画像を扱う場合、IoT機器で収集した画像データをセンターに転送後、処理を行おうとすると大容量データ転送のためのネットワークリソースも多く消費します。IoTシステムにおける画像データ利用は幅広い分野への適用が期待される一方で、ネットワークを中心としたリソース有効活用の工夫が求められています。
本稿では、IoT機器自身に一定の画像処理能力を持たせるエッジAIチップ※1とそれらをセンターと協調して動作させるミドルウェアを組み合わせ、大量画像データの処理を効率的に行うIoTシステム全体の構成を設計・検証した内容の一部をご紹介します。

IoTシステムは、各種センサーを搭載した「IoT機器」とIoT機器が取得したデータを処理する「センター」で構成されます。一般的なIoTシステムでは、システムリソースを潤沢に確保しているセンターが処理の多くを受け持ちます。しかし、センター集中処理前提のアーキテクチャで大量の画像データを扱おうとすると、膨大なリソース消費が起こりえます。例えば、玉石混交の画像データをセンターに集めるためのネットワークリソース、それらを受け取ったセンター側で画像データを一時的に蓄積するためのストレージリソース、画像データの有用性を判定するためのコンピューティングリソースなどです。
一方、最近ではエッジAIチップやFPGA※2の低価格化・普及により、IoT機器の高機能化が加速しています。その結果、センター外での画像データ処理も一定レベルで実現できるようになってきています。

 

そこで、IoTシステム全体の最適化にむけ、今回は、次の3点を中心に設計・開発しました。

1点目は、今までセンターで行われていた画像処理の一部をエッジAIチップ搭載のIoT機器上に実装しました。画像データをIoT機器からセンターへ送るネットワークリソース、センターでのストレージリソースとコンピューティングリソースの軽減につながります。

2点目は、IoTエッジコンピューティングのフレームワークを活用し、IoT機器とセンターにおける処理タスクを一貫してコントロールする仕組みを設計・構築しました。例えば、普段はIoT機器で画像処理を行っているものの、緊急度の高い処理要求が同時発生してIoT機器の能力を超えた場合、センターに画像処理を依頼するといった処理タスクの動的配置が可能となります。

3点目は、リアルタイム性の低いデータは、一旦IoT機器のローカルに保存し、安価な通信方法(wifi等)が利用可能になったときにデータを送信する仕組みも独自に開発しました。これにより、ネットワークコストの削減が期待されます。

検証では、自動車事故発生時の車載カメラの処理をユースケースに測定しました。具体的には、車載カメラ搭載の自動車が事故に遭遇したことが疑われる場合に、前後数秒~数分の車載カメラ映像を優先的に画像認識させる処理です。本処理をリアルタイム性高く実行することで、その結果に基づく被害軽減アクション(例えば警察・消防への通報や後続車への共有)への迅速な連携につながります。
本ユースケースを題材に、事故発生から画像認識結果に応じたアクションまでの処理を、①センターだけで処理する構成、②IoT機器だけで処理する構成、③IoT機器とセンターの組み合わせで処理する構成の3つの構成にて比較・検証を行いました。その結果、IoT機器・センター・ネットワークに関する主要なコストが、③では、①と比較し10分の1以下に、②と比較し5分の1程度にまで抑えられることが確認できるとともに、画像認識処理のリアルタイム性向上が達成されました。

 

本検証を通じて、画像データ処理をIoT機器中心で行いながら、処理タスクの動的配置、優先制御を実施することの有効性が示されました。今後は画像データ処理の多くをIoT機器側で行うシステム構成が主流になってくると考えられます。
NRIでは、企業のDX戦略の実現をサポートするため、各技術領域について、調査、検証・評価を実施しています。今回は、本取り組みの一部である、IoTシステムにおける大量画像データ処理の調査・検証について、その一部をご紹介しました。今後も、NRIでは、この分野での最新の動向をキャッチアップ、調査・検証を通じて、安全・安心で、より柔軟なシステムの実現に取り組んでまいります。

※1 エッジAIチップ:AIによるディープラーニングや機械学習を実行できる半導体チップ(AIチップ)のなかでも特にIoT機器への搭載を狙ったもの。小型で低消費電力であることが求められる
※2 FPGA:Field Programmable Gate Arrayの略称。回路の構成をプログラムできる論理回路を集積したデバイス

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