はじめに
こんにちは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)関連の技術支援を担当している蒲です。
先日、NRI社内のAWSコミュニティ運営メンバー主催のもと、AWS Jamを開催しました。今回は、AWS Jamの当日の様子と、NRIにおけるクラウド人材育成の取り組みを紹介します。
NRIでは先進的な生成AI活用やAWS Outpostsを利用したハイブリッド環境の推進など、高度なクラウドビジネスを展開しています。実際に、2024年3月には国内企業でいち早く「AWS Generative AIコンピテンシー*1」を取得し、生成AI技術を活用したビジネスを加速させています。また、2024年11月には「AWS Outposts*2」を導入したハイブリッドクラウド環境を構築し、機密データを自社の管理下に置きながら先進的なクラウドサービスを利用できる環境づくりに取り組んでいます。
このような高度なクラウドビジネスを実現するためには、単にクラウドの認定資格を取得するだけでなく、実践的なクラウドスキルを持った人材の育成が欠かせません。今回のAWS Jam開催は、まさにそうした実践力を高める取り組みの一環として実施しました。
AWS Jamとは
AWS Jamとは、AWSが提供するクラウド学習イベントの一つで、チームで協力しながらクラウド技術の課題に取り組むゲーム形式のハンズオンコンテンツです。参加者は実際にAWSマネジメントコンソールを操作しながら様々な技術課題を解決していきます。例えば、サーバレスアプリケーションの構築やセキュリティ対策の実装など、実践的な課題に挑戦できます。
AWS Jamの特徴は、単なる講義や座学とは異なり、実際の業務に近い形でAWSの技術を学習できる点にあります。100種類以上もある膨大な課題の中から目的や参加者のスキルレベルに合わせて選択でき、時間制限の中で得点を競い合うゲーム性も備えています。これにより、楽しみながら実践的なクラウドスキルを身につけることができるのです。
AWS Summitなどの大規模イベントでも人気を集めるAWS Jamは、初級者からベテランまで幅広いエンジニアが参加できる学習の場となっています。また、参加者はチームで協力して問題解決に取り組むため、技術スキルだけではなく、チームワークやコミュニケーション能力の向上にも効果的です。
NRIでは、この実践的な学習の場を社内に導入することで、より多くのエンジニアがAWSの構築スキルを高め、実際のプロジェクトで活かせる力を身につける機会を提供したいと考えました。
NRIのAWSコミュニティ活動について
今回のAWS Jamの社内開催は、NRIが長年継続してきたAWSコミュニティ活動の新たな施策として実施しました。AWSコミュニティの運営コアメンバーが中心となって企画することで、実践的なクラウドスキルの向上とエンジニア同士の交流を促進しました。このような取り組みの背景には、NRIが2011年のAWS東京リージョン開設時から発展させてきた、エンジニア主導のAWSコミュニティ文化があります。
NRIのAWSコミュニティは、週次で開催している勉強会を軸に発展してきました。毎週開催している週次勉強会では、AWS公式の「What’s New」で1週間分のアップデート情報を読み合わせ、さらに社員による個別トピックの発表を行っています。AWSのアップデート件数は2010年から2020年の間に約30倍以上に増加し、この急速なクラウドの進化に組織として対応するために、毎回平均50~60人が参加する貴重な学びの場を提供しています。
また、週次勉強会だけではなく、現場のエンジニア以外のマネジメント層やビジネス部門に向けた大規模な勉強会イベントも開催しています。過去に開催した「事例共有メインの勉強会*3」では実際のAWS活用事例を幅広く共有し、「AWS re:Invent Recap*4」ではAWSの最新動向を分かりやすく伝えるなど、ターゲット層に合わせた多様なコンテンツを提供しています。特筆すべきは、これらのイベントがトップダウンではなく、エンジニアコミュニティ主導で継続してきたことです。このように年間を通じた様々な活動が、NRI内のAWS技術者コミュニティの活性化と人材育成を支えています。
こうした土壌があったからこそ、今回のAWS Jamもコミュニティ主導で企画・実施することができました。実践スキルを持つAWSエンジニアを増やすことは、NRIの高度なクラウドビジネス実現に不可欠な人材育成の重要な柱になると考え、私自身AWS Ambassadorとしてこのようなコミュニティ活動を継続していきたいと思っています。
AWS Jam 開催の経緯と準備
AWS Jamを開催するきっかけとなったのは、我々AWSコミュニティ運営チームがAWS Skill Builderチームサブスクリプションを入手したことでした。AWS Skill Builder(以下、Skill Builder)は、AWSの公式トレーニングプラットフォームで、ハンズオン演習や認定資格対策コンテンツなど豊富な学習リソースを提供しています。このチームサブスクリプションを社内の技術コミュニティで有効活用するため、社内AWSコミュニティの全社チャットチャンネルで参加希望者を募ったところ、すぐに定員の50名が集まりました。この高い関心を受け、サブスクリプション利用者を中心にAWS Jamを定期的に開催することで、コミュニティの活性化と実践的スキル習得の機会を提供できると考えました。
AWS Jamの実施に向けては、参加者の技術レベルに合わせた適切な問題選定が最大の課題でした。AWS Jamには100種類を超える問題が用意されていますが、初心者から上級者まで様々なスキルレベルの社員が参加することを想定し、チーム内で協力しながら解決できる問題を選定する必要があります。また、業務時間後の開催となるため、限られた時間内で充実した学習体験を提供できるよう、時間配分や進行方法の工夫も必要です。オンサイト開催に伴う会場準備や当日の運営体制など、技術面以外の準備も入念に行いました。
運営面では、コミュニティのコアメンバーが中心となり、当日の進行をスムーズに行うための準備を進めました。注力したのは、選定した問題を事前に運営メンバー自身が解いてみることで、想定される質問や躓きポイントを把握し、参加者をサポートできる体制を整えることです。また、単に技術的な課題解決の場としてだけでなく、NRIが目指す高度なクラウドビジネスに必要な人材を育成する場として位置づけること、技術習得に加えて、参加者同士のネットワーキングや組織全体のクラウドスキル底上げにも寄与するイベントになりました。
当日の様子
当日は、参加者が3~4人ほどの少人数チームに分かれ、画面に映し出されるAWS Jamのダッシュボードを見ながら、和気あいあいとした雰囲気の中でスタートしました。チーム編成は事前に配慮し、AWSの経験豊富なメンバーと初心者が混ざるよう構成しました。オープニングでは簡単なアイスブレイクを行いチーム内のコミュニケーションを促進したり、各チームには名前を付けてもらい、リーダーボード上での競争意識も高まります。
Jamがいざ始まると、各チーム与えられた課題に真剣に取り組みはじめます。サーバレスアプリケーションの構築やセキュリティ関連の設定など、様々な技術的課題に四苦八苦する様子が見られましたが、チーム内で知識を共有しながら徐々に問題を解決していく過程は、まさに実践的な学びの場となっていました。特に印象的だったのは、普段の業務では触れる機会の少ないAWSサービスにも積極的に取り組む姿勢で、Amazon ECSやAWS Lambdaなどのサービスについても活発な議論が交わされていました。
イベント終了間際まで順位の入れ替わりが続く、白熱した戦いでした!結果発表では上位チームを表彰し、どのような方法で課題を解決したかを共有する時間も設けました。参加者からは「実践的な課題に取り組むことで座学では得られない学びがあった」「チームで協力して解決する楽しさを味わえた」といった前向きな感想が多く、次回開催を望む声も多数寄せられています。
参加者の声
- スムーズかつ盛り上げ上手な進行でとても楽しかったです。問題も普段触らないサービスが多く、勉強になりました。
- AWS Jamに参加してから、本当にモチベーションがあがり、Skill Builderを活用する時間も増えたので参加できてよかったです。
- AWS Jamで触れたECS・ECRは、これまで業務で実践的に使用したことはなかったので、使用イメージがついて、資格取得に役立ったと感じています。
- 課題を解決するための手段を自分(チーム)で考え実践していくことで、座学で各サービスのポイントを学ぶよりも、各サービスの特徴が理解しやすいと感じ、もっと実践的な勉強を増やそうというモチベーションアップにつながりました。
さいごに
今回のAWS Jam開催を通じて得られた手応えを踏まえ、今後は定期的な開催を計画しています。実施形式についても、より多くの社員が参加できるようハイブリッド形式の導入や、難易度別のコース設定なども検討しています。さらに、Skill Builderチームサブスクリプションの活用促進も合わせて強化していきます。こうした継続的な取り組みにより、NRI全体のクラウド技術力向上を目指すとともに、社内のAWSコミュニティをさらに活性化させたいと考えています。
さいごに、NRIでは高度なクラウドビジネスの推進に向けて、AWS認定資格の取得だけでなく、実践的なクラウドスキルを持つ人材の育成が不可欠だと考えています。今回のAWS Jamの社内開催は、その一環として大きな成果を上げることができました。参加者のモチベーション向上やSkill Builder活用の促進、現場エンジニアの技術コミュニティへの積極的な参加など、当初の期待以上の効果が表れています。
これらの取り組みは、一時的なイベントではなく、NRIが長年培ってきたエンジニアコミュニティ文化を基盤とした継続的な人材育成の取り組みとして、今後も発展させていく予定です。本記事が、皆様の社内での取り組みの参考になれば幸いです。
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