はじめに
こんにちは、NRIでフロントエンドやバックエンドの開発標準化、技術支援を行っている前田です。
2024年6月13日(木)~18日(火)にてオランダ・アムステルダムで連日開催された、開発者向けカンファレンス「JSNation」、「React Summit」に現地参加しました。
本記事では、イベント初日「JSNation」における現地での体験をご紹介します!なお、「React Summit」についても後日atlaxブログにて公開予定です。
What's JSNation?
JSNation とは、GitNation Foundation が主催する JavaScript を主軸に置いたカンファレンスで、フロントエンドエンジニアが多く集います。GitNation は、オープンソースソフトウェア(OSS)に焦点を当てたイベント開催を行う、オランダ・アムステルダムを拠点に置く財団です。イベント開催を通じて、エンジニアや研究者、有名なライブラリや技術コアチームとの繋がりを提供するとともに、OSSプロジェクトやその開発者を称えるオープンソース・アワード授賞式を毎年開催することで、OSSプロジェクトやコミュニティを支援しています。
本カンファレンスの詳細は公式サイトをご覧ください。
会場の様子
当イベントは主にトークセッションと登壇者へのQ&A、登壇者を含むイベント参加者とのディスカッションで構成されています。
トークセッションは2つの会場で行われました。
併設会場では、本カンファレンスのスポンサーがブース展示しており、各ツールやサービスについてデモを交えた紹介や相談を受けることができました。
オープニング
オープニングセレモニーはメイン会場で行われました。大変多くの人で賑わっていました。
トークセッションは、Vue.js および Vite の開発者であるEvan You氏の講演で幕を開けました。
OSSプロジェクトとしての Vue.js フレームワークの成長に関する10年の回顧と、ビルドツールとして高いシェアを誇る Vite の開発、統一されたJavaScriptツールチェーンに対する今後の展望について語られました。OSSコミュニティの醸成にあたり重要なポイントや苦労話、課題感等、生の声を聞ける貴重な講演でした。
セッション振り返り
ここからは聴講した講演のうち、私が特に印象に残ったものをお伝えします。
取り上げたトークセッション以外についてもアーカイブ視聴できますので、気になる方はこちらをご覧ください。
ESLint One for All Made Easy
Vue.js や Nuxt、Vite の開発コアメンバーであるAnthony Fu氏による講演で、JavaScriptの静的解析ツールである ESLint の紹介でした。
具体的にはESLintバージョン9.0から導入されたFlat Configの紹介があり、従来までの複数かつ複雑なツリー構造で定義されたコンフィグファイルを簡素化できるとして推奨がありました。移行に関しても互換性のある支援パッケージやツールがあるとのことでした。 さらにESLintはルール定義次第ではLinterとしての役割だけでなく、Formatterとしても利用できることを強調されました。
Web Apps of the Future With Web AI
Google 社で Web AI をリードするJason Mayes氏による講演で、クライアントサイドで機械学習モデルを利用する技術である Web AI についてデモを交えつつ講演がありました。
Web AI は TensorFlow.js をはじめとする JavaScript で実現され、Webブラウザ上でクライアントサイドにて機会学習モデルを実行できます。そのためプライバシーやオフライン機能、低遅延等のメリットを享受できるとのことです。Web AIそのものはまだ黎明期の段階にあるが、Web体験に対する革命を起こす、アクセシビリティ向上の可能性を秘めていると語っていました。
AI - Using AI During Development, What's the Future of Development Going to Be, etc.
ディスカッションルームで開催された本セッションは、「開発におけるAI利用、開発の未来」をテーマに議論が展開されました。
具体的には GitHub Copilot や Amazon Q Developer、Google Gemini Code Assist 等、開発環境でコーディング時に用いるサービスとして台頭されるものとの向き合い方、セキュリティ面での考慮点等、各々が抱いている思いや疑問、課題感、将来への野望を伝え議論する場となりました。
AIエージェントとの向き合い方についての議論では、「現状、開発者とAIエージェントとの関係性は、単なるツールとして開発者が利用するという『主従』な関係性にありがちであるが、現実における一友人のように時に褒め、時に指摘するような『対等な』関係性があるべきだと思う。そのような良好な関係を築くことがいずれ精度向上にも繋がると考えている。」という意見があり、その熱量に会場では参加者皆笑みがこぼれるとともに、映画のSFに例えられるような、開発パートナーとして共に生活する未来がすぐ目の前にあると改めて感じました。
また従来よりエンジニアに求められるスキルとして、業務理解スキル、システム設計/構築スキル、コーディングスキル等、種々考えられますが、生成AIの普及によりプロンプトエンジニアリングも重要なスキルとして挙げられると話題になりました。白熱した議論の末、結論は出ませんでしたが、開発現場におけるエンジニアとしての在り方に対して、パラダイムを変えて役割を見直す必要があると強く語られました。
写真からも分かる通り、世界中のエンジニアと一つテーブルを囲んで一テーマについて議論する機会は大変貴重で、良い経験ができました!
海外エンジニアとの交流
会場ではトークセッションの合間やイベント終了後の自由時間など、限られた時間ながらも海外参加者の方々と言葉を交わす機会が少なからずありました。各々の専門領域や業務内容の紹介、イベントの感想、Webアプリやネイティブアプリなどフロントエンド領域に関連した普段抱える悩みを打ち明けるなど、海外ならではの文化に触れつつ議論することができ、非常に有意義な時間となりました。
おわりに
私自身はじめてこのような海外開催の大規模なカンファレンスに現地参加しましたが、世界中のエンジニアと目的を一つに新たな技術に触れる時間は大変刺激的でした。
世界的に先進なフレームワークにアンテナを張ることは重要であり、特に技術変革の潮流が激しいフロントエンド領域については、その潮流を意識したキャッチアップが求められると改めて肌で感じました。
また今回の JSNation では、フロントエンドエンジニアが多く集まっていましたが、フロントエンド領域に閉じたフレームワークやサービスだけでなく、トークテーマとして「AI」を主に取り上げたものも多く見られました。このことから開発現場におけるAI利活用に対する注目度、重要度の高さが伺えました。
今回 JSNation、React Summit で得た経験を元に、今後も常日頃から先進技術に積極的に触れることで自身の技術と知見を高めるとともに、ひいてはお客様のシステム、サービスの向上に繋げられるよう努めてまいります。
本記事が海外カンファレンスやOSSコミュニティに関心を抱くきっかけとなれば幸いです。 「React Summit」の現地参加レポートも別記事でご紹介していますので、ぜひご覧いただければと思います!
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