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NRIの先進テクノロジーに関する取り組み ~専用機器に依存しないネットワーク~

IT基盤技術戦略室

小売・製造、金融・公共をはじめ、幅広い業界において「先進技術を活用してビジネスモデルを変革(DX)し、お客さまへ価値提供していきたい」というテクノロジー活用への期待が高まっています。一方、その期待に反して、技術変化のスピードが速く、技術キャッチアップやその活用が難しいといった悩みもお聞きします。

そのような声にお応えするため、株式会社野村総合研究所(NRI)では「潜在的な顧客ニーズ発の技術調査」「技術動向を見据えた先進技術の早期評価「獲得した技術の事業適用」に継続的に取り組んでいます。このような活動を通して、NRIは専門知識を用いて企業様のビジネスとテクノロジーの架け橋となり、DX実現まで伴走します。

このブログでは、NRIで推進している先進的な技術獲得の取り組みについて、ご紹介していきます。今回は、「専用機器に依存しないネットワーク」に関する調査研究の成果をピックアップしました。

 

専用機器に依存しないネットワークを構成する方式

DXの浸透を背景に、Webサービスの利用拡大に伴いシステム構造がメッシュ化する等、データセンターネットワークへの要件が複雑化しています。また最近では、半導体供給不足によりハードウェアの納期遅延や価格高騰の懸念も続いています。このような背景のもと、データセンターネットワークは、柔軟に進化可能なアーキテクチャや調達スピードの迅速化が求められています。
ネットワークは、ハードウェア(以下、HW)とソフトウェア(以下、SW)が統合された専用機器を調達し構築することが主流です。しかし、本構成の場合、特定の専用機器に依存するため、上記にあげた柔軟性や迅速性が失われる懸念があります。本稿では、専用機器に依存しないネットワークを実現するための方式をいくつか紹介します。

一つ目は、HWとSWを分離したマルチベンダ構成を採用する方式(方式①)です。特定のHWベンダに依存せずにHWを調達、また要件にあわせたSWの採用・個別カスタマイズも可能です。本方式では、HWに「ホワイトボックススイッチ」を利用する方法と、「COTS(Commercial Off-The-Shelf)サーバ」を利用する方法があります。ホワイトボックススイッチを利用する方法は、ネットワーク処理に特化したHW製品(ホワイトボックススイッチ)とネットワークOSを別ベンダから調達し、それらを組み合わせてネットワークを構成します。一方、COTSサーバを利用する方法は、一般的にサーバとして利用されている汎用サーバ製品(COTS)、および仮想アプライアンス(VNF)を利用してネットワークを構成します。それぞれの方法で提供される機能は、搭載するOSに依存します。

二つ目は、ネットワーク事業者が提供するNaaSを利用する方式(方式②)です。ネットワークリソースをサービスとして利用できるため、HWやSWの調達は不要であり、また事業や組織の拡大縮小にあわせて構成を柔軟に変更することが可能です。SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)のサービスやHW機器をサブスクリプションサービスとして提供しています。また、一部のネットワーク事業者は、拠点に設置するルータをサービス提供しています。特定の期間のみ利用する場合や機器調達が難しい場合は、このサービスの利用も有効な方法となります。ただし、これらのサービスはインターネットの利用が前提となるケースが多いため、セキュリティ等を考慮したネットワークデザインが求められます。

三つ目は、クラウド事業者が提供するネットワークサービスを利用する方式(方式③)です。IPSec、ファイアウォール(FW)やサーバーロードバランシング(SLB)等の機能をサービス提供しています。これらのサービスを活用することで、例えば専用機器で構築されたインターネットVPN環境をクラウドリフトする等が考えられます。柔軟にスケールが可能なクラウドサービスのメリットを十分に活かして事業や組織の拡大縮小に追従した構成が可能です。
上記にあげた方式を一つもしくは複数を組み合わせることで、専用機器への依存を低減し、柔軟性と迅速性を兼ね備えたネットワークの構成ができます。ただし、それぞれの方式で提供される機能は、サービスの内容や仕様等に依存するため、構築するネットワーク要件の確認・検証が必要です。

以上を踏まえ、NRIでは、拠点(ブランチ)やデータセンターにある既存のネットワークを専用機器に依存しない方式に代替する構成案の一例を検討しました。
図1は、ある企業のブランチからWAN経由でクラウドサービスやデンターセンターにあるシステムの利用を想定したネットワーク構成です。本構成に対して、専用機器に依存しない方式にて代替しうるポイントを纏めています。ポート数や転送能力が求められるネットワークコンポーネントはホワイトボックススイッチへ、ブランチのルータ等の迅速性が求められるネットワークコンポーネントはNaaSへ、FWやSLB等の柔軟な拡張や機能追加が求められるネットワークコンポーネントはCOTS+VNFへの代替が考えられます。

 

 

NRIでは、企業のDX戦略の実現をサポートするため、各技術領域について、調査、検証・評価を実施しています。今回は、本取り組みの一部である、専用機器に依存しないネットワーク構成の調査・検証について、その一部をご紹介しました。
今後も、NRIでは、この分野での最新の動向をキャッチアップ、調査・検証を通じて、安全・安心で、より柔軟なシステムの実現に取り組んでまいります。

※ VNF:Virtualized Network Functionsの略。ルータ、ファイアウォール、ロードバランサーなどのネットワーク機能をソフトウェアとして実装。

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